機龍のお悩み相談 初体験編

「何? 儂に怪獣男娼としての手解きを教えて欲しいと?」
「そうなんです。実は私、雌としての経験はあっても雄の方で“した”経験はほぼ無くて……なので、経験豊富…いや貴方にも事情があって否応なしに男娼になったのはお気の毒と判りますが、良ければ教えていただけませんか?」

場所は変わり、娼館のロビー。今私はとある雄の怪獣に頼み事を申し出ていた。
眼前の大柄な怪獣―――ゴジラ。メニューに記載されているデータによるとギドラに囚われたモスラを助けるべく不本意ながら怪獣王の位から一転、怪獣達に体を開く男娼に身を窶したという経歴を持っている。
重い過去を思い出させるのを承知で、しかもこんな突拍子もない相談に当然といえば当然だが、意外な事に彼は驚いたように目を見開き、それから呆れたように大きな溜息を零した。

「あ……えっと、ひょっとして訊かれるのはお嫌でしたか?その…ご迷惑ならいいんです。私が浅慮な事を言ったせいですから……」

私が慌てて言い繕う間にも、ゴジラは苦笑いしながらかぶりを左右に振って否定を示す。

「いやいや、別に迷惑だとは一言も言っておらぬ。しかし、其方のような容姿端麗の機械怪獣が男色の方に疎いなどとは意外であったから面食らっただけだ。それで、儂に男娼としての手解きを訊きに来たという件だが……そこまで律儀に迫られると否とは言えぬな」
「…! あ、ありがとうございます!」
「…して、何故其方はそんな下世話な事を教わりに来た?」
「え……ああ。それは……」

ゴジラに促され、私はこれまでの経緯を話す。
今まで散々酷使されてきたオプションパーツもとい人工疑似雌蕊がスペア含めて使い物にならなくなり、メンテナンスの為暫くは雄のパーツを使えという技術者からのお達しを受けたからだ。つまり、期間が来るまで私は雄としての機能を使わなければならない。
しかし実際の所、今までの客は一様に雌として私を扱ってきた為に男娼としての経験は無いに等しく、入れられるのはともかく所謂他人の肛門にモノを挿入するという行為が理解できない。故に娼館で唯一現役の怪獣男娼であるゴジラに恥を忍んで教えを乞いに来たのだ。

「ほぅ…その様な事情があったのか。それは大変だったのだな」
「……はい。ですがパーツがメンテナンスから戻るまで暫くは男娼として活動していく為ですし、これも必要な事だと割り切ってます。それにゴジラさんに比べたらまだ私なんて……」
「ふむ、そうか。ならば機龍よ。ここで野暮な長話も何だから、一度儂の部屋に入ろうか」

そう言って私は目の前の怪獣王に誘われるまま専用タッチパネルを使用して彼の個室に入ると、早速簡素ながら怪獣(ゴジラの方では怪獣ではなくタイタンという名称らしい)サイズに合わせた青く大きな長方形の寝台に腰をかけ、隣に座るよう促す。
一旦腰を落とすと恐らく相当に使い込んでいると思わしきスプリング音が軋む音が私の臀部から聞こえる。シーツはこまめに取り替えてあるものの、それでもベットの木枠に残滓が飛び散った跡がある。
更には部屋に置いてある家具がこの寝台と指定用タイマーを置くための簡易な机、壁に取り付けてある鏡くらいのもので意外と質素な印象を抱かせ、ここが娼館の一部屋―――というより独房にしか思えない程だった。

(怪獣王というからにはもう少し豪奢にしても良いようにも思うが……案外こういう場所の方が落ち着けるのか?)

そんな事を思いつつ視線を部屋中に向けていると、不意に肩をぽん、と叩かれた。

「っひゃ!?な、なんですか?」
「そう身を硬くするでない。別に其方を痛めつけようとか、取って食おうとは思っておらぬ」

確かにいきなり触れられたので驚いたが、これから彼に男娼としての心得を教えてもらう立場だ。幾ら無礼だったとしても、挙動不審な態度は反省しなければ……と気を引きしめようとしたのだが、目の前の怪獣王は鼻を鳴らして改めて私の方に視線を渡す。

「して機龍よ、改めて訊くが其方は男色の経験がないと言ったな?」
「え……はい。申し訳ありませんが、その点に関しては…」
「気に病む事はない。それに、其方の場合では下手に経験があるよりも純情な方が味があるというものよ」

純情、と言われて少し心外ではあったが、そんな私の戸惑いなど構わずにゴジラは私の手をすっと取ると、機械特有の冷たさを自らの掌で味わうかの如くスリスリと軽く擦らせ、そのまま指と指を絡め合わせてきたのだ。

「あっ…あの、ゴジラさん?いきなり何を……?」
「緊張しなくてもよい。こうするとな、不思議と心と身体が落ち着いてくるのだ。……其方は機械の身とはいえ体温があって、柔らかみもあるのだな」

そう言ってゴジラが私の手を、まるで壊れ物を扱うように優しく握り込むと、それがやけに心地良く感じられて思わず私も身を委ねてしまう。確かに彼が言う通り掌から伝わる熱は温かくて、嫌でも安心感を抱かされるものだった。これも私の“中身”―――同族の骨が共鳴しているのだろうか。その間にも定期的に鼓動を刻む電子心音もペースが短くなり、生身ならば間違いなく頬が赤くなっていただろう。実際、私は自らの目が赤く灯るのを感じていた。

「む? 何やら目が赤くなっておる様だが、もしや照れているのかね?可愛い奴だ」
「い、いえその……古来から生きてきた威厳のある貴方とこんな事をするのは、とても気恥ずかしくて……」
「そんな事は無い。儂は今の其方に雄を感じるぞ」

そう言ってゴジラは私の腰に手を回すと、再び正面から顔を近付けてきた。まさかまだ何かするつもりなのか……緊張していると不意に私の半開きの口許に唇を落としてきて、その接触箇所から柔らかい感触と暖かさが伝わる。

「っん……く、ふぅ……」

舌のない冷たく無機質な咥内が相手の吐息に上書きされ、同時に先程私の手を握り込んでいた掌が一層強く握り締められる。
違う。違うんだ、決して貴方と契りを結びに来た訳じゃない。これはあくまで練習であって、本番とかゴジラを直々に指名した客とのソレとかでは断じて無いんだ。心の中で必死に言いくるめ、高鳴る鼓動を抑えようとするが私の努力も虚しく電子心音は更に大きく跳ね上がり、全身に火照りのような熱さが増していく。そして次の瞬間にはもう、私も無意識に怪獣王の首に手を回してしまっていた。

密着度が上がり、ぴちゃぴちゃと水音が上がる度、握り締められた片手同士が一層力強く繋がる。こちらにも舌があれば眼前の怪獣王のそれを思う存分弄べるのに…ともどかしく思う中、不意に接吻が解かれた。

「む……少しいいか」
「……ん、ぁ…?」

唇が離れて数秒後、自分が何をしているか分からぬまま惚けているとゴジラは小さく笑みを零して頭をそっと撫でてきた。

「乗り気にさせているところ悪いが、そのオプションパーツ?とやらを着けてくれぬか? 肝心のモノがないと始まらんからな」
「……わ、わかりました。少々お待ち下さい」

ゴジラに促され、私は予め持参していた特殊ポーチに手を伸ばす。その中身は、装着用の専用工具と新鮮まっさらの雄パーツ―――傍から見ると女性が性行為の際に男役として穿くペニスバンドに見えるが、これはそんな単純なものではない。
前方はわざわざ私の体色に合わせて竿部分が黒のコードで構成されており、亀頭部分は艶めく鈍色で、この疑似雄コネクター全体に潤滑剤がまんべんなく塗られている。これは行為を円滑に行うための措置であり、挿入される相手に苦痛を与えないようにするための配慮でもある。
そして後方は挿入される用の窄まった孔を入口として、外見は疑似雌蕊と大差ない搾精用の人工肉壺が備わっている。ちなみに特定の箇所を突くと、これまた愛液よろしく潤滑油が染み出るように出来ており、少し入り口を掠めただけで指先がテラテラと濡れていた。
こんな機能がありながら誰から見ても卑猥なパーツを装着する瞬間を、あの怪獣王が隣で見ている。そう思うだけで羞恥心が募っていき、緊張で手が震えているとゴジラが落ち着くように背中をポンポンと叩いてくる。

「機龍よ、大丈夫か?手が震えておるようだが」
「あ…す、すみません!ちょっと緊張してしまって……」
「む……成程な。だが無理もないぞ。客の前でこんなモノを着けて相手せねばならぬとは、随分と難儀なものだな」
「はい…これも前戯の一環と判ってますが、やはり見られるのは慣れませんね」
「まあ確かにな。しかし此処には儂しか居らぬし、何より今からするのは練習なのだ。必要以上に恥じらうこともないぞ」

優しく宥められたおかげでそこそこ緊張が解けてくると、私は意を決して寝台から一旦降り、股座部分の装甲を外すとオプションパーツもとい擬似雄器を履く形で身に付ける。その際に雰囲気を上げるための甘いパルスが微かに流れてきて呻き声を小さく上げるが、一呼吸置いた後なんとか平常心を保ったまま作業に取り掛かる。

「んっ……く、ふぅ……」

専用の特殊スパナでボルトをひとつひとつ締める度に、私はこれから雄をモノで突いたり、雌にされているみたいに疑似肉壺を奥深く突かれたりする怪獣男娼になってしまうんだ…という意識が強くなっていき、思考と身体がせめぎ合いを起こしながらも手は淡々と作業を進める。
そして一旦取付作業を終えて、しっかり固定されているか確認の為に垂直にそそり立った男根部分を持ち上げる。ずっしりとした重みが手元に伝わり、神経回路と接続した事を示す定期的な鼓動が強く刻まれる。これなら多少腰を激しく動かしても取れる心配はなさそうだ。

「っは、あ……で、出来た…!」

ようやく準備を終えたところで私は安堵の吐息を漏らした。もし此処に今誰か来ればきっと、私の破廉恥でみっともない姿に引くか嘲笑するに違いないだろう。そんな展開を恐れつつ寝台の方を見ると、ゴジラが鋭い牙の覗く口を開けて感嘆の溜息を零す。

「ほぅ……見事だな。どうせ人間の作ったモノなどと侮っていたが、今ここで其方に雄としての格の違いを見せつけられた気がするぞ」
「そ、そんな…大袈裟ですよ。それにコレ、本物じゃないですから……」
「いや、其方の恥じらう表情も相まってな。見ているだけでゾクゾクする」

そう言ってゴジラは微笑みを見せると徐に寝台から下りると私の足許に跪き、尚も硬度と角度を変えないままの疑似男根に顔を近付けてくる。

「えっ? ちょっと、ゴジラさん……?」
「ふふ……早速だが少しばかり味見をさせて貰おう。なに、大丈夫だ。痛い事や恐ろしい事はせぬ」

あやすように言いつつ、ゴジラはそっと男根を握っていた私の手を解くと、続け様に舌先を先端部分へ這わせた。擬似ではあるとはいえ一応亀頭に相当する箇所なので多少くすぐったくはあったが、そんなものは一瞬で気にならなくなってしまう程の感覚が下半身から背中にかけて一気に駆け巡る。

「ひゃあぁうッ!? あっ…ま、待って下さい! いきなりそんな所舐めるなんて…っ!」
「うむ……やはり完全に疑似という訳ではなさそうだな。機械なのに、ちゃんとした肉感と味わいが感じられるぞ」
「そんな冷静な感想なんて、いいですからぁ!だ、駄目です……ッくぅんッ♥ か、感じちゃ……っ!」

擬似男根を舌の拘束で前後に繰り返し扱かれた後、今度はそのまま喉奥で音を立ててちゅぅぅ……と熱烈に吸いつかれ、擬似男器の亀頭が丸ごと捕食されるような感覚に襲われる。それは雌の身体ならば陰核全体を徹底的に容赦なく愛でられる様なもので、気を抜けば直ぐに絶頂を迎えられそうな程の感覚に情けない嬌声を上げてしまう。
怪獣王の容赦ない口淫に翻弄され腰砕けになりつつも、それでもどうにか踏ん張った……のだが、更にじゅぽじゅぽと音を立てて吸引された。

「あっ!?ぁあぁッ! くふぅう…ッ! あひぃっ♥ や 、やめ……っ♥そ、そんなに吸い付かれ、たらぁっ!」

私の哀願が聴覚に届いたのか、ゴジラはやっと口を男根から離す。その表情は僅かに名残惜しそうではあったが、それ以上に楽しげでもあった。

「ふふふ……先程から遠慮がちにしているが、身体は素直だな。筆下ろしだというのに早々からそんなに喘いでいては、最後まで保たぬぞ?」
「す、すみません…本当に“雄”になったのは今回が初めてで、どうも感覚が……」
「案ずるな、そういった反応も初々しくて愛でたくなるものよ」

そう言ってゴジラは再び男根を愛おしげに握り込むと、今度は右手で上下に激しく扱き始めてきた。同時に舌先は敏感な亀頭部分を何度も執拗に舐め回し、絶頂欲が昂るのをじわじわと促進していく。

「あひッ♥ ま、まって……それ強すぎますっ! ふぁあっ♥♥ で、でるっ……!」
「うん? もうイキそうなのか、機龍よ。すぐに果ててしまうとは、中々早漏で淫らな身体だのう」
「うぅ…っ♥ 言わないで、下さい……ッ」
「ふふっ、すまないな。しかし安心するが良い。この場で果てようと、すぐに勃たせてやるからな」

言葉が終わる直前にゴジラは休む間もなく手淫の速度を加速させていき、刺激に耐えられずモノの尿道口近くがキュウっと反応を示してくると、再び口を大きめにくぱっと開けて先端を咥内へ含む。

「ひぃうぅっ!♥♥」

流石は数多くのタイタン達の男根を咥え込んだだけあって、様々な形状ながら雄の感じる箇所を的確に知り尽くしたそのテクニックに私は何度も身体を戦慄かせる中、無意識にぐっとゴジラの後頭部に置いた手に力が入る。その時ゴジラがビクッと体を震わせた気がしたが、快楽に堪えるのに必死で間髪入れずに、彼の喉奥まで私の人工陰茎を残らず突っ込ませてしまう。

「ん゛ッ、ぐ……っ!?」

股座からくぐもった声を耳にした私は、やってしまったとすぐさま両手を離そうとしたが、次の瞬間にまたもや膝をガシッと掴まれ、逃げることもままならない体勢で容赦ないピストンを繰り返されてしまう。

「ッ!?  あ゛ぁあッ! う、ぅあっ♥ 激し……っ!♥」
「んぐっ…ふっ、んっ……!♥」

怪獣王の咥内が機械の疑似男根を余すとこなく咥え込み、搾り出そうと吸い付いてくる。時折喉奥でぐぽっと嵌まる音がして、そのあまりの気持ちよさに頭が真っ白になりかけた私は咄嵯にゴジラの頭をまた掴んで固定すると、反射的に腰を激しく動かし始める。

「はぁっ、はぁ……ッ!♥ う…あ゛ぁあっ! き、気持ち良いっ♥ 気持ち良いです、っゴジラさんッ♥♥」
「むぐぅっ、ぐぷっ……ん゛ごぉっ!♥ふ、ぅぶうっ…んぐっ♥♥♥」

疑似男根が出し入れされる度にゴジラの咥内からぢゅぽぢゅぽと生々しい音が響き、舌が一層締め上げられると私はより一層腰を激しく動かす。口内の喉奥を突く度に痙攣し、時々くぐもった声を発して苦痛を顕わにしながらも彼は決して歯を立てるような事はしない。それどころか萎えない疑似雄器の刺激に耐えながら唾液と先走り汁で咥内をぐちょぐちょに濡らしていき、舌では竿部分を包んで擦ったり裏筋やカリ首を弾くように撫で回したりしながらじゅぽ♥じゅぽ♥♥と音を立てて吸引していく。

「んぁっ! だ、駄目ですっ……!♥ そ、そんなにされたら……ッ!?」

絶頂感が段々せり上がってくる感覚に私は思わず腰を突き出してしまい、一層深く喉奥に男根を穿ってしまう。直後、そこから咥内の甲高く粘液質な音と篭った悲鳴が響き、疑似雄器が更に深く飲み込まれると私は一気に精を吐き出す。

「く、ぁっ……!い、イク……ッ!♥♥ イッちゃいますぅっ! あ゛ぁあっ!!♥♥♥」

刹那、目の前がチカチカとスパークを起こし、下腹部辺りがきゅっと縮こまるような感覚がした。その直後、男根の先端から凄まじい勢いで人工の精液が放たれていくと、それをゴジラは拒む様子もなく必死になって喉奥に溜め込んでいく。

「んぶッ!?♥♥ ぐぶっ……♥ ふごっ……おぼっ゛お゛ぉぉ゛!!?♥♥」

予想外の勢いと量に思わずゴジラが苦しみ、くぐもった苦鳴を上げる。だが決して口から吐き出すような事はなく、必死に喉元を上下させながら搾り取っていく。
そんな射精は暫くの間続き、やがて落ち着いた頃を見計らってゴジラが男根から咥内を離す。
そして私が慌てて謝罪の言葉を口にする前に彼は口許に付いた残り汁を舌舐めずりで飲み干すと、顎にまで伝った分を指で掬い取り、そこでもねちゃねちゃと舐め取る。

「ふぅ……げほっ、こほっ…♥ 良い射精だったぞ、機龍よ」
「あ……っすみませんゴジラさん。私、貴方に苦しい思いをさせてしまって……」
「謝る必要はないぞ。儂も其方に快楽を与える事ができて満足している。しかし儂も少しやり過ぎたな、すまぬ」

とは言いつつも、その表情は何処か“してやったり”と言いたげに見える。しかし私が何か言葉を発そうとした直後、まだ半勃ちの疑似男根を大きな掌で優しく握り込んでくる。

「ひぁ……ッ♥」
「む……?先程達したばかりなのに、もう勃っているのか?」
「ぁ……」

そんなまさかと思いながらも自分の身体に視線を落とすと、萎えていた筈の疑似男根は硬さを取り戻しつつあった。恐らく“中身”が共鳴の余りに欲情が治まらず、未だに発情しているのかもしれない。淫靡な光景に思わず羞恥しているとゴジラが顔を近付けてきて、今度は片手で擦り始める。

「ふむ、これなら次に移っても大丈夫そうだな。ふふ、今度は存分に楽しませて貰うぞ」
「つ、次…ってまさか、また口でするんですか……?」
「そうなるな。但し違う方の口で、だがな」

意味深な言葉を口にした後、ゴジラは寝台の方へ身を翻すとその上に乗って手招きしてくる。その時彼の腹部が確認できたが、もう既に彼のいきり立った生の男根が臨戦態勢になっている事には気付かない振りをして、私は緊張した足取りで彼の元へ向かう。

「それで、違う方の口というのは……」
「ああ、此処だ」

そう言ってゴジラは自ら脚を開き、尻の谷間の奥にある肉孔を見せつける。ギドラを始めとした数多ものタイタン達に穿たれ、開発され続けたそこは雄を求める為にあるかのようにヒクついており、すっかり裏返った肉弁の縁がラビアのような襞を形成しているのが窺える。
そして太腿の内は、彼らが致した跡を残したのであろう幾本もの線が刻まれ、今まで彼が受けてきた陵辱の軌跡を物語っていた。

「ほ、本当にソコへ挿入するんですか?」
「なぁに、儂を相手にする連中はこぞって極太男根の持ち主ばかりよ。時には二股のモノを挿れられて苦痛な事もあったたが、今ではこうして何者だろうと受け入れられる故、心配は要らぬ」
「いや、心配してるのはそこじゃなくて……」
「……何だ? はっきり言わぬか。儂の勘違いなら恥ずかしい限りなのだが……」

気恥ずかしさからか小声になるゴジラに私は多少罪悪感を感じつつも、その不安を口にした。

「すみません…これから貴方を穢してきたタイタン達と同じ様な事をするのかと思うと、やっぱり気が引けます。それに、貴方の此処は見ていてとても痛々しくて……」
「機龍よ」
「……っ!?」

不意に名前を呼ばれ動揺しながら顔を上げると、そこには真っ直ぐにこちらを見下ろすゴジラの視線があった。彼の目は口淫の最中に見せたものとは全く異なり、真摯さと同時にどこか自嘲するかのような哀しみに染まっていた。

「機龍、儂が今更そのような事を気にする風に見えるか? 穿かれる苦しみや痛みなど、もうとっくの昔に感じなくなっておる。それに……」

そこで一度言葉を切り、ゴジラは静かに、そして諭すかのように微笑んだ。

「其方は雄としての悦びを知る為に此処へ来たのだろう? 其方の初体験には些か不十分な躰かも知れんが……せめて其方が立派な“男”になる瞬間を、この目で確かめさせてくれ」
「……っ!」

穏やかながら何処か期待に満ちた表情と言葉を耳にした瞬間、先程まで感じていた不安や罪悪感が一気に吹き飛ぶ。
ここまで来たらもう後戻りはできない。くっと息を呑みつつ私は彼の両脚を抱え上げると、すっかり上向きになって先走り液を垂れ流している擬似男根の先端を、薄桃色の熟れた肉孔にすり…っと宛がう。

「判りました。それでは、挿入しますね」
「っふ……ぁ」

ソコに触れただけでゴジラが頷きつつ小さく息を吐き、喉元が少し仰け反る。その鋒部分が徐々にぐぶぐぶと呑み込まれていくと、ゴジラはひとつ体を震わせた。

「はぁっ…♥ ん、ぅっ…き、りゅ……」
「くっ……!」
(うぁ…っどんどん入る…!)

疑似男根が入り込む度、私も腰が痺れるのを感じた。あくまでこれは擬似的な体験だと分かってはいても、身体を震わせて切なげな声を漏らしているゴジラの様子に興奮しない訳がない。
同時に肉壺の拘束感による摩擦と熱さの快感もダイレクトに伝わり、私は息を荒げつつもある程度先端を押し入れるとゴジラが息を呑むのがわかる。
焦らされているように感じて待ちきれないのか、それとも先程の言葉通り期待しているのか。どちらにせよ私は襞の誘いに乗せられるまま、根元まで一息に男根を押し込んだ。

「ぁあ゛ッ!?♥♥♥」

私の腕の中で怪獣王が一際高い嬌声を上げると共に身体を仰け反らせ、突き立てた擬似男根をきゅんきゅんと締め付ける。そのふたつの意味で強過ぎる刺激に、私も息を詰まらせた。

「ぁ……っぐ、う……!♥♥」

辛うじて射精は耐えたものの、目の前の光景には否応無しに目を奪われてしまう。
今のゴジラの姿は風格高い怪獣王から一変、牙の覗く咥内からだらしなく舌や唾液を溢して目を蕩けさせ、ゴツゴツの腹筋すらも僅かに痙攣している。そして何より男を象徴した生殖器は上を向いて先走り液すらだらしなく漏らしており、誰が見てもこの快楽に溺れているのが一目で分かる状態になっていた。

「う……挿入いれただけで凄いですね、ゴジラさん」

ひとりでに思った事を口にしてしまうと、ゴジラはそこで我に返る。直々に指摘された事で照れを隠すかのように視線を逸らしつつ、軽く息を漏らすとその場で苦笑した。

「はっ……ぁ♥ そう、だ…な。其方のモノが思った以上に熱くて逞しいせいで、つい興奮してしまった」

息遣いも露に返答しつつゴジラは私の胸元に右手を滑らせると、なだらかなカーブを描いた銀の胸筋をつっとなぞる。その挑発するかのような仕草に、何故かこちらの胸の奥でキュンっと音が鳴った気がした。

「……あまり煽らないで下さいよ、ゴジラさん」
「ふふ……良いではないか。それより、儂は早く続きをして欲しいのだがな」

私が溜息混じりで少し拗ねたように呟くと、ゴジラもまた強請るように小さく腰を揺すり始める。その快楽に浸る表情が愛しくなり、私もそれに応えるかの如く僅かに腰をあとに引かせる。

「……っ!」
「動きますよ、ゴジラさん。痛かったりしたらすぐ言って下さいね」
「ああ、わかっ……ッぁ、んぐっ!」

返事を聞く前に、私は腰を前に突き出し、硬度が変わらないままの疑似男根を、時間をかけて押し込んでいく。一度モノを呑み込んだソコはぬちゃり、ぐちゅっと粘着質な音を立てて屹立した男根を最奥まで迎え入れた。
気を緩めると一瞬のうちに出してしまいそうだが、まだ達してしまっては勿体ない。そう思ってなるべく自制してゆるゆると動かしてみたが、それでもゴジラにとっては強い快楽だったようで、彼の身体がのけ反る様にビクビクと震える。

「はぅ゛っ♥♥ぅあっ!♥ぁ、んっ……あ゛ぁっ!♥♥ 機、りゅ…っ! もう少し、早く…うぅっ♥」
「すみません…ですがこちらが一度や二度出したぐらいでは収まらないでしょうから、出来るだけ一緒に気持ち良くなりましょうね?」

喘ぎ続ける怪獣王を宥めつつも、擬似男根をぬちゃっ、ずちゅっと音を鳴らして何度も抜き差しする度に内部は更なる強い快感を求めて引き締まり、肉壁もひくひくと蠢いて絡み付いてくる。
かつて私が雌になっている時、客は執拗い程にこちらの疑似雌蕊を何度も穿ってきたが、今ではその気持ちが痛い程に判る。こんなに敏感な箇所を熱く柔らかな肉壺に包み込まれたら、抗う事はおろか更に締め付けを返して来るため快楽の虜になってしまう。“中身”の共鳴の高まりに反応して疑似男根がビクビクと痙攣する度、私自身も身震いしている程だ。

「んっ♥ ふっ……あ゛ぁっ! くぅ、ん……っはぁあっ!♥♥ ぁ、あ゛っ!♥ あ゛ァあ゛っ!♥♥」
「く……はっ、ゴジラさんっ、ここが良いんですか?」

今まで私の相手をしてきた客の真似ながら、擬似男根で内壁を―――特に奥まった箇所を押し上げるように穿っていくと一際大きな嬌声を上げてゴジラの身体が跳ねる。
雄も奥が弱いんだなと内心で納得しながらもう一度ソコを強く抉ると、ゴジラは目の奥に火花が散ったかのようにガクガクと震えながらぎゅっと瞼を閉じて「ぁ、かはっ……!」と息を詰まらせた。
その反応を見た私は、彼の逞しい腹筋の上で嬉し涙を零し、痛い程勃起している陰茎を握って優しく扱いてあげる。

「おぉ゛ッ!?♥ おっ、う……やめっ♥ そこはぁあっ!♥♥」
「やめろと言われても、っ貴方のここは気持ち良いって言ってるんですけど、ねぇ……ッ!」
「ンぉ゛おッ!?♥はひっ♥うぁあっ!♥♥あ、あぁあっ!!♥♥」

切なげな声を上げて身をくねらせるゴジラのその雄々しい姿があまりにも艶かしく、つい私自身も熱くなってしまう。そうしてモノを弄ぶのを忘れず何度も何度もその箇所を重点的に突いている内、先端が何かにちゅぱっと吸い付かれるような感覚が伝わった。

「っ、うぁっ!?」
(何だ、今の……!?)

得体のしれない器官に抵抗された事に怯んでついモノから手を離し、腰の動きを止めてしまうとゴジラが焦れた様に熱っぽい視線を送ってきた。

「は…っ何故止めるんだ? 焦らすなんて其方らしくもない…」
「え、ええと…さっき何度か奥を突いていたら何かに吸い付かれて、思わず止めてしまいました」

ごめんなさい、と言う前にゴジラは一つ鼻を鳴らすと「説明が足りなかったな」と漏らし、気だるげに腹を撫でつつ説明を続けた。

「止める必要はないぞ。ソコは“結腸”と言ってな、雄が最も感じる場所のひとつだ」
「結腸、ですか……?」
「う……んっ、そうだ。奥まっていて辛いだろうが…ほれ、もう一度そこを穿いてみせてくれ。儂が悦ぶようにな」

少し躊躇いつつもゴジラに言われるまま、私はその箇所を狙って男根を侵入させてゆく。相変わらず肉の籠絡は凄まじく、柔らかく男根を包み込む粘膜が奥へ征く度に狭まってゆき、いよいよ先端が結腸弁に差し掛かると肉壁の締まりが一際強くなる。

「ゴ、ゴジラさん…キツいっ……!」
「ぐぅ゛……♥ ぅあ゛!♥♥ ん゛お゛ぉっ!♥♥♥」

達しそうになるのを何とか振り解き、ぐぶぐぶと張った雁首が狭い肉壺を舐り、件の箇所―――結腸目掛けて男根を進めた途端、ぬぽんっ♥と私の作業を労うかの如く先端を抱擁して嵌まり込む。その刹那、ゴジラの体がびくりと大きく跳ね上がった。

「がっ、は……ッ!♥♥ ぁ゛ああぁああァあ゛ぁっ!!♥♥」

喉元を仰け反らせながら身体を大きく震わせると、今度は張り詰めた陰茎からぷしゃあぁぁ♥と透明な液体が弧を描いて噴出する。それはあっという間に彼の腹筋を疎らに濡らし、シーツすらも湿らせてしまう程だった。

「わっ!だ、大丈夫ですか!?」

反射的に怯んでしまい、慌てて体勢を整えようとするとゴジラが辛うじて首を縦に振ったかと思うと息を荒げつつも、途切れ途切れに声を上げる。

「っはー……♥ は、ぁあ゛♥ んはっ、入ったな……結腸まで……」
「ご、ごめんなさい……ですが痛いのでは?」
「問題ない。それよりどうだ? 初めて誰かの奥に深く挿入した感想は?」

先程盛大に潮吹きした時の苦悶の表情は何処へやら、ゴジラは優越さを含む微笑みを交えて問いかけてくる。その姿に一瞬見惚れてしまったが、先程の感覚を思い出しながら私は言葉を紡いだ。

「すごかったです……モノの先端をきゅうっ、と圧迫してくるのもですけど、包み込んでくる感じと言いましょうか? 兎に角気持ち良くて……」

私が答える傍から私のモノが良いところを掠めたのか腰さえ小さく震わせつつも、ゴジラは心底満足そうに低く笑う。

「ふふ、そうか。気に入ってもらえて何よりだ」
「は、はい。でもゴジラさんは平気なんですか? こんな奥まで挿入られて……」
「なに、行為中は毎回よくある事だ。ココをしっかりと穿けたのなら、其方は立派な“男”として既に勲章物だぞ?」

その言葉を裏付けるかのように、私が収めた男根をきゅん♥きゅんっ♥と小刻みに締め付けてくる肉壺の感触に腰が震える。特に先端部分を包んでいる時折奥の弁が「もっと」とねだる様に吸い付いてきて堪らない。

(言ってる側から締め付けてくるなんて……!)
「そ、それなら良いのですが……」

平静を装いつつも少し遠慮がちに答えると、ゴジラは潤んだ目を細めて私を見上げる。その熱い眼差しに内心どきりとしながらも私は彼の中にある己のモノを僅かに引き抜き、再び奥へと埋め込む。

ずぶぶぶっ♥ ぐぼっ、ごぢゅぅううぅっ♥♥

「ぁ゛、ああぁあぁっ!♥ んぁ゛ああぁあ!!♥♥ ♥ ぁ、あぅ……んお゛ぉおおっ!!♥♥」
「ぐぅッ…! 次はこちらがイクまで止めませんから、ね……ッ!」

宣言しながら勢いを付けて最奥を貫くと、肉襞が粘膜全体で歓迎するように私のモノをきつく締め付ける。あまりの快感に視界がチカチカするのを感じつつゴジラの太腿を裏側から押して更に腰を上げさせ、そこから先程見つけた箇所目掛けて何度も己の屹立を叩き付けた。

「ぉ゛っ!?♥ お゛ぁあっ!♥♥ あ゛ぁアぁあッ!!♥♥」

私の責めで開いた弁を雁首が捲り上げる度、ビクンッ♥とゴジラの腰が跳ね上がる。それと同時に射精こそしていないものの、彼の鈴口からは壊れた蛇口のようにカウパー液がとろとろ流れ出ていた。

「はへぇ゛っ!♥ き、きりゅっ♥♥ そこ、良いっ……!♥♥ぁ、あ゙〜…♥♥ んぅうう゛ッ!♥♥」
「ええ…好きなだけ悶えて下さいね、ゴジラさん。はぁ……っ私も“男”になった以上、貴方の中でなら何度だって気持ち良くなれますから」

堪らず思い切り腰を前後させるとぐぢゅうっ♥♥と執拗に絡み付く肉の抱擁を受けた。更に何度も己の昂ぶりを繰り返し蹂躙させれば、びくびくと痙攣し続ける熱い襞が疑似男根に絡みつき、宛ら一体化を求める様な感覚に身震いする。
その様子に満足しているとゴジラの尻尾が私のそれに蜷局を巻くかの如く絡みつき、それがまるで同時イキを催促されているように感じられた私は更に腰をどぢゅどちゅと動かしていく。

「うぁあ゛っ♥♥ ん゛ぅっ、は、激し……♥ はッ、はひィっ♥♥ く、クるぅっ♥ 雌孔ケツま〇こ貫かれてイってしまぅう゛っ♥♥」
「……怪獣王たるものが、そんなはしたなくて下品な言葉を使っては駄目じゃないですか…ねぇっ!」

誰から教えられたのかは知らないが、唐突に吐いた卑猥な言動へのお仕置きも兼ねて、どちゅっ!!♥と最奥まで突き上げた瞬間、先端がまたもやぐっぽりと結腸の穴へ嵌まり込む。同時に尻尾で私の腰に絡み付いていたゴジラの力が更に強まったかと思うと、両脚が快楽を逃がすまいとより強く私の下腹部を締め付けてきた。

「くあぁっ…で、射精るっ…!♥」
「~~っ♥♥♥ あ゛、あ゙ぁああッ!!♥♥ ふか、いぃっ!♥♥ イクっ、イグぅう゛ううぅっ!!!♥♥」

ぎゅううぅ♥と引き千切れそうな程に尻尾が締め上げられた次の瞬間には腸壁全体が波打ち始め、それを受けた私自身もまたびゅるるっと勢いよく射精する。
まるで人工精液を余すことなく歓迎する蠕動に堪らず腰を震わせてやり過ごしていると、ゴジラも腸内へ直に人工精液を叩き付けられた感触に興奮しているのか、口を思い切り開けて恍惚の笑みを湛えていた。

「はっ、はへぇえ゙ぇえ♥♥ぁ、あ゛〜〜……っ♥♥ あづいぃい゛……♥」
「はぁ……っは……」

大量に射精した影響で溜息を吐いていると、こぷん、と彼の下腹部で音がした。私の人工精液が彼の体内に満遍なく行き渡った証拠だ。
尻尾が解かれる中、貫禄のある怪獣王が俗に言う“アヘ顔”を晒し、開いた口端からは一筋の涎が垂れている。流石にやり過ぎたか……と慌てて声を掛けるが反応はない。

「あの……ゴジラさん? 大丈夫ですか?」

気になって頬に手を添えるも目を瞑ったままで全く動じず、それどころかびくっ、びくっ♥と身体を揺らす始末だ。これは些か宜しくない状態に陥っているのではないかと思い至った私は慌てて彼から疑似男根を引き抜こうとする。

「抜きますよ? じっとしていてくださいね」
「んはぁ……っ」

返事の代わりに嬌声が返ってくるのを確認し、慎重に彼の腸内から引き抜いていく。とろぉ……と肉柱部分と後孔の間に粘着質な糸が伝い、ある程度引き出したところで止めた。

「んっ……ぅ♥」

まるで排泄をしているかのような感覚に快楽を覚えるのか、ゴジラは眼を細めながら甘い吐息を溢して小刻みに身体を跳ねさせる。その様子に不覚にもドキリとさせられてしまったものの、何とか刀身を全て抜くと案の定ちゅぽんっ♥と先程まで一時的に愛し合っていた箇所から空気音がした。

「ひぅっ!♥♥」

途端、ぶるっと身震いしたゴジラの括約筋がぎゅんっと力んでしまい、内部の疑似精液を再び体内へと押し戻してしまったようだ。すると腸壁のうねりに負けたのか粘度の高い白濁液が腫れ上がった縁の部分から垂れてしまい、ぬるぅ……♥と滴り落ちていく。
ああ、また彼の内腿とシーツが汚れるな。そんな心配をする前に私もまた行為の疲れからか、それともゴジラの淫らな痴態にあてられたのか、彼の隣に寝そべる。

「ちょっと失礼しますよ、ゴジラさん……」
「む……ぁっ?」

虚ろな眼差しでぼんやりとこちらに視線をやると、漸く我に返ったのかゴジラが気恥ずかしそうに眼を逸らした。

「す、すまんな……先程は年甲斐もなく淫らに耽ってしまって……」

そう言って決まり悪そうに縮こまる彼に対し、私は小さく微笑んで答えた。

「いいえ、とても良い経験でした。この度はどうもありがとうございました」
(私とは全然比べ物にならない程の体躯を持っていても、まるで乙女みたいになってしまうことがあるんだな)

と内心思いつつ会話を続ける。すると先程までの淫靡な雰囲気は何処へやら、彼は恥じらいながらも逆に私を労ってみせた。

「ふふふ……そう言ってくれるならば何よりだ。其方も吹っ切れた様だし、儂も久々に楽しませて貰ったぞ」
「な、なら良いのですが……本当に大丈夫ですか?無理させたとかでは……」

流石に心配になり念を押してそう問いかけると彼は私の問いかけの意図を察したのか僅かに眼を細めながらもフッと小さく笑ってみせる。

「なに、心配するな。確かに結腸まで攻められたのは少々堪えたが、儂を求める連中は挙ってそうするからな。それに……」
「それに?」
「……下手すると癖になりそうだ」

そう言いながら己の下腹部を撫で回すゴジラは先程の姿が嘘のように淫靡で、見ているこちらが思わず息を呑んでしまう。彼は私のその様子に気付いているのかいないのか、ゆっくりと顔を上げて私の瞳を射抜いたかと思うと深みのある声色でこう囁いた。

「そう言えば機龍よ、後ろの方はまだなのか?」
「後ろって……後孔のことですか?」
「ああ。儂にはギドラの命で挿入が禁止されている分ソコを掘削ができぬ。しようものならばサンの奴…左の首が目敏く嗅ぎ付けて、また0からやり直しにさせられてしまう」

嗅覚も宛ら、何という過酷で悪辣な条件だろう。ギドラはそこまでして彼を雌に貶める気なのか。私が無言で驚愕と共に憤っている中「話が逸れてしまったな」と呟くと、再びゴジラは口を開いた。

「とは言っても少し挿入される位置が違うだけで、其方が雌になっている時と然程変わらんだろうがな」
「あー……まあそうですね」

いきなりの話題に先程の憤りから一転、溜息混じりに苦笑しながらそう答える。確かに彼の言う通り、今のゴジラは私と同じ受け身側だ。だからといってすぐさまソコを穿たれれば雌としての快感を得られるかと問われればまだ答えは否であるし、正直あまり意識もしていなかった。
ただ敢えて言うなら、処女のままモノを生やして男性を相手にしているという事でどこか不思議な気持ちにはなっているかもしれない。それが何かは上手く説明出来ないけれど、言葉にするならば『背徳感』が近いのだろうか? そんな私の考えを読み取ったのか、はたまた彼自身も考えることがあったのか定かではないが、ゴジラは小声で「彼奴を呼ぶか」と呟き始めた。

「えっ?彼奴って誰のことですか?」
「なに、この娼館の常連客のことだ。そいつは決まって儂を選んでおる」
「な、なるほど……」

もし彼の知り合いの怪獣だとしても誰が呼ばれるか解らない以上、こちらから口を挟むことはないと思い黙っておくことにした。しかしどうやら私の反応は想定済みだったらしく、彼は「余り呼びたくはないがな…」と呟きつつも言葉を続けていく。

「コングだ。お主も一度は耳にしたことはあるだろう? 奴の名ぐらいは」
「ああ、あのコングさんですか。ゴジラさんの、戦友というか好敵手というか……そのような方ですよね」
「如何にも。彼奴は古来からの腐れ縁でな、由来を話せば長くなるのだが……何せ娼館に来ればギドラ同様、必ず儂を雌扱いしたがるのだ」

忌々しそうに語ってみせるゴジラだが、実際のところ満更でもなさそうだった。しかしだからと言っておいそれと踏み込める領域でもなく、私は愛想笑いで誤魔化して話を続けることにした。

「つまり次は私達でコングさんを?」
「そうなるな。……言っておくが彼奴はかなり粗暴だぞ?下手をすれば一晩中付き合わされる羽目になるやもしれん」

その脅しとも取れる言葉に少々身体が強張るのを感じた矢先、くっと片手を握られる。驚いて視線を向ければ、そこには先程までの妖艶な笑みではなくこちらを慈しむ様に見つめたままの彼が、相も変わらず穏やかな面持ちで私と目線を合わせようとしている。

「心配することはない。其方、荒くれ揃いのタイタンを相手取るのは初めてだろう? 儂も最低限の手助けはするゆえ、何時も通り接客に励むと良い」
「は、はい…そうですね。ありがとうございます」
(いや、荒くれ揃いのタイタンは貴方も含まれてますからね……?)

と内心ツッコミつつも優しく握り返しつつ笑みを返す。すると彼もまたつられたのか両目を細めて微笑み返してきた。

「なに、礼などいらんさ。お主とはこれから先も長く付き合っていきたいからな」

そう言い切ると、彼は少し恥ずかしそうに視線を反らした。その様子がまた可愛らしくて、私はつい口許を綻ばせてしまう。

「っ…わ、笑うでないぞ……」
「ふふ、すみません」

かあっと顔を赤らめた彼に対し素直に謝罪の言葉を口にしながら再び手を重ねて指を絡める。ゴジラはそれでも尚照れが残っているのか明後日の方向を眺めながらぽつりと言葉を零すばかりだ。
どこか感慨深そうなその様子に、私は安堵を覚えると意識を闇に―――機械で言うスリープモードへ落とし込んだ。