機龍のお悩み相談 序章

薄ぼんやりとした照明が灯る部屋の中、バシィッ、とヒトより大きい掌が右隣にいる雄怪獣の臀部を容赦なく打ち付ける。この時叩かれた隣の彼―――ゴジラは四つん這いのまま痛みに呻きつつ、歯噛みしながら顎を仰け反らせた。
彼が動いた弾みで寝台がぎしりと軋む中、無意識に来る恐れから私はシーツを強く握り締める。身動ぎしたくなるのは当然だが、如何せんこの責苦が終わるまで尻尾を下ろしてはいけない。
不意に掌の気配がゴジラから離れた。つまり次は私の番か……そう思った時、空を切る音を認知すると臀部に激しい痛みが襲いかかってきた。

「っ…………!」

鋭い痛みに耐えかねて呻き声を上げたものの、掌の主―――コングはその反応が気に入らなかったらしく、もう一度パァンッ!と臀部を引っぱたいてきた。

「あ゛……ぅ…っ」

銀の装甲から覗く黒い人工筋肉に焼鏝を当てられるような痛みに口許を噛みしめていると、私同様に辱めを受けているゴジラは相変わらず苦痛に耐えつつも、紅潮した顔をこちらに向けてきた。

「く…っ、どうしたのだ機龍。声を出さぬと痛みを愉しんでいると思われるぞ。……ぐぅッ♥」

そう言って不敵に笑うゴジラも、再び臀部に新たな一撃を受けてくぐもった悲鳴を上げる。私と違い、コングと深い因縁のある彼は痛めつけられ具合も気合が入っているように見えて、度重なる追討ちに耐え続けている。

「ははっ、可愛いところ見せるじゃねぇか王サマ。同僚と並んでケツ叩かれる感想はどうよ?」

問いかけながら皮肉っぽく笑うコングも、私達二体を並ばせてこんな嗜虐的な遊びに興じているという背徳感に圧されてなのか、荒い息を口許から漏らしている。後ろを振り向けないお陰で表情は伺えないが、声のトーンからして興奮を隠し切れていないのは明らかだ。

「……お客、いえコング様。お戯れも程々に願います」

痛みに耐えたまま返答できないゴジラの代わりに私が返答すれば、コングはその場で苦笑を浮かべると「悪い悪い」と反省していなさそうな軽い口調で返事し、一旦止めるどころか私の臀部を強めに、しかも数発も叩いてきた。

「あぎ……ッ!?ぐぅうっ、い゛っ……!」

奥歯を噛みしめて声を我慢した分、叩かれた箇所に激痛が走る。それを二度三度と繰り返していると次第にソコが熱のみならず甘い痺れを帯びていくのを感じた。

「くぁっ、あ゛ぁっ! ……ん゛ぅ…!」
(これは……いけない)

熱い箇所めがけて新たに叩かれれば叩かれる程、苦痛は上書きされるばかり。人工筋肉はおろか“中身”にヒビが入りかねない執拗な殴打に臆して堪らず身体を強張らせた瞬間、私の手の甲にゴジラの手が重なる。

「ゴジラ、さん…?」

気が付けば、彼もまた男娼としての己が堪えるべき痛みに耐えているらしかった。だが苦悶の表情は私よりも薄く、臀部に与えられる痛みに興奮しているように見え、同時に私を労り宥める余裕すら伺えた。

私達が現在のようにコングの玩具にされている理由は、一昨日にまで遡る―――。