「……うぅ……」
電力が回復し、稼働音が鳴り止んで暫く経った後、私はゆっくりと寝台の上で身を起こした。その際に肉壺から僅かに『ぐちゃり』と粘っこい白濁が溢れ落ちる。
「っ……!」
自然と溢れ出てしまった液体が排泄される感覚で熱っぽい吐息が漏れてしまい、動揺して口元を手で覆うと隣に座っていた存在―――これまた私同様に全身を殆ど汚されたゴジラが「気が付いたか」と呟き、軽く視線を向けてきた。
「ゴジラさん…私、何時の間にスリープモードに入ってしまって……はっ!?」
彼の心音と体温を感じつつ気を失う寸前にあった一部始終を思い出し、羞恥で反射的に目を赤らめると、ゴジラは首を横に振る。
「あれから色々大変だったのだぞ。其方が気絶した直後、コングは機龍が死んだかと思って泡食っててな。それに儂の方も、其方が存外重くて退けるのに苦労した」
「重……!? あっ、それは申し訳ありません!」
不可抗力で起きたトラブルとはいえ咄嗟に謝るも、ゴジラは私を攻めるどころか相変わらず穏やかな面持ちで返答する。
「なに、気にするな。流石にコングの奴も頭が冷えたようだしな。お陰で奴は体を清めに入ったし、こちらも無闇に延長されずに済んだわい。そうだろう、コング?」
語尾の部分でゴジラは部屋の端に呼び掛ける。視線を移すとそこには十分反省したのか所在なさげに体育座りで座り込み、こちらに拗ねた視線を送ってくるコングの姿があった。
「……すまねぇな機龍。ちっと調子に乗り過ぎた。もうこんな事はしねぇ」
「いや…いいんですよ。本番行為はできない代わりに休憩という形になりますが、貴方もこちらに来ます?」
「え゛っ、い…いいのかよ?オレ、下手すりゃお前を殺しかけてたかもしれないのに…」
まだ私が処理落ちしたショックが抜けていないのだろうか、ゴジラが悪戯っぽく笑い掛けているのに対してコングは最初に会った時よりと違って萎縮してしまっていた。そんな様子を見ていた私は肩を竦めて首を横に振る。
「そうでしょうね。まぁ説明不足のせいで貴方を驚かせてしまいましたけど、結果的に行為自体を中断させてしまったのは私ですし……それに、その後の処理は多少してくださったみたいなので、どちらにしても痛み分けです」
「……アンタ優しいな。そんじゃ、お言葉に甘えて失礼するよ」
徐に立ち上がり、気まずそうに頭を掻きながら近寄ってきたコングが私達と背を向ける形で寝台に深く座り込む。しかしやはり気まずさは拭えないのか、ふと私の方に振り向いて少し恥ずかしそうに視線を合わせてきた。
「機龍……アンタを『悪いメカゴジラ』とか疑っちまって本当にすまなかったな。まさかこの期に及んですっとぼけてんのかと思って、あんな無茶な事しちまった。……怒ってねぇか?」
「いえいえ、これもお仕事ですし気にしていませんよ。それにこちらも“おもてなし”の勉強になりましたし。
それにしても、貴方にもちゃんと謝れる素直なところがあるんですね」
「ッ!ば、馬鹿! ったく……褒めたって何も出ないっての」
遜色ない言葉を掛けると、褒められることに慣れていないらしいコングが真っ赤な顔で悪態を漏らした。それに畳み掛けるかのように隣からゴジラの呆れ声が聞こえる。
「機龍の言う通りだぞ。一々拗ねるな、面倒臭い奴め」
「あ゛!?べっ別に拗ねてねぇよ!!クソッ、調子狂うなぁ……」
そんなやり取りに私も微笑ましく思っていると、ふと机の上に置かれているアラームが高らかに鳴った。
どうやらここでコングの指定したプレイ時間は終了らしい。
「おっ、時間だな。……名残惜しいがそろそろアンタらとはお別れだ」
「そうですか……」
「名残惜しい」という言葉に何故か私の方もほんの少しだけ寂しさを覚えてしまう。……先程まで私の尻を思う存分叩き、あまつさえペニスで激しく掻き回したばかりだからか?と自問するが答えは出ない。
そんな私の内面を知る由もないであろうコングはひとつため息を吐くと、ゆっくり立ち上がった。
「そんじゃあな、機龍。次があればまた宜しくな」
「ええ……それではまたのご指名をお待ちしておりますよ、コングさん。お話楽しかったですよ?」
「儂の事も忘れるでないぞ、コング。いつでも躰で歓迎しよう」
ゴジラの見送りの言葉にコングは照れが入ったのか、小声で「馬鹿野郎」と呟いて部屋から立ち去る。そんな様子を見ていた私がふと微笑むと、ゴジラがくっと手を重ねて微笑んできた。
「しかし…少し予想外の出来事があったとはいえ、機龍はあのコングをも容易く手懐けるとはな。ふふっ、やはり面白い奴だ」
「えぇ?それを言うなら貴方もですよ、ゴジラさん。何時も彼とはああいう感じなんですか?」
「……まぁな。毎度毎度尻を叩かれるのだけは嫌だが、これも奴の性分だ。受け入れる他あるまい」
ゴジラの何処か諦めたような発言に一瞬居心地が悪くなって思わず顔を背けると、彼は珍しく優しげな表情を浮かべて私に顔を近付けてくる。
「それにな、機龍。儂は嬉しかったのだぞ」
「えっ……?」
「奴に奥を抉られそうになった時、其方が手を握って励ましてくれたこと。あれで随分と気が楽になった。改めて礼を言いたい」
「い、いえ……」
普段は雄々しさが際立つ彼がこうも穏やかで優しい態度を取られると、何か恥ずかしい気持ちにさせられる。自然と視線を逸らしていると、やがて彼は悪戯っぽく笑い掛けてきた。
「さて、そろそろ我々も身を清めるとしようか。儂と機龍も互いの体液でべとべとだからな」
「えっ?あ、そうですね。では……っ!?」
言われて自分の肉体を見下ろすなり絶句する。確かに私とゴジラの身体は思った以上に大量の白濁がこびりついたままで、行為が中断されてからすっかりそのままだった事を思い出した私は慌てて寝台から降りようとするも、まだ足腰が覚束ないせいで上手く立ち上がれずによろめいてしまった。
「……大丈夫か?」
そんな私を咄嗟に支えるゴジラに礼を言いつつも、私は恥ずかしさを覚えて彼の体に身を預けてしまう。
「す、すみません…まだ強制スリープの余韻が残っているみたいでして……少しの間だけ、貴方の体をお貸し頂けませんか?」
「構わないが…相当消耗しているようだな。丁度いい、儂が躰を清めてやろう」
「え!?ちょっ…そ、そんな気遣いは結構ですよ!」
私の狼狽を他所に、ゴジラは私の身体を軽々と抱き上げて寝台から降り、そのまま部屋の隅のシャワー室へと向かう。
「何を遠慮しているのだ。今の其方は一人で立てぬだろう?ならば儂が介助するしかなかろうに」
「うぅ…何から何まで感謝します……」
仕方ないと思いながらも何故か彼が私に触れる度に胸が高鳴るような心地を味わいながら、私は大人しく彼に身を委ねる事にしたのだった。
後日、私は雌蕊パーツがメンテナンスから帰って来るまでゴジラに続く怪獣男娼となったのだが、孔を使うのは勿論その上に擬似男根で客を攻めるという行程が挟まり、その筋でのリピーターこそ増えたは良いものの今度は腰痛の恐怖と直面しながらプレイに励まねばならない事になってしまうのだが、それはまた別の話である。
【終】
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