とある冷凍怪獣の獄中回想記

 

遠い昔、蒼い光を湛えた怪獣の王と連携し、空の彼方から降臨してきた三つ首の怪獣を激闘の末凍らせ、手負いになった所を“ご主人様”―――もといスカーキング率いるグレイト・エイプの一味に「お前は強くて美しい」という理由で骨の首輪を嵌められ、光すら通さない穴蔵に繋がれてから幾年もの時が経ったのだろう。

ゴツゴツした岩壁とマグマの滝越しから絶えず聞こえてくるのは、“ご主人様”とその取り巻き達が無理やり従わせているグレイト・エイプらの怨嗟に満ちた嘆声と怒号、そして元締めの機嫌を損ねた咎に対しての悲痛な懇願であり、時には命乞いに続いて断末魔まで聞こえてくる。それらを耳に入れたくないが為に頭を背けて蹲ろうにも、ほぼ首を四方から固定されているせいで全身がまともに動かせず、哀悼の代わりとして目を強く瞑るしかなかった。

けれど、それ以上に最悪な出来事はもう一つあった。それは……私の閉じ込められている穴蔵には“ご主人様”しか知らない秘密の入り口があり、その扉を通って彼がやってくることだった。
今日も誰かが暴行を加えられた挙句、命乞いすら空しく無情にもマグマに突き落とされてしまったようだ。またひとつ、無残に消えた命を憐れみ悼んでいると、不意にひたりひたりとこちらへ近付いてくる足音がする。

 

ああ、今日もまたご主人様の気が済むまで慰み者オモチャにされてしまうのか。これからされる行為に思わず体を強張らせている内に、その気配の主は苛立った様子で重い岩の扉を開けてこの空間に入ってくるのだった。