猩々の宴/祈

「おい、シーモ? さっきから、ワシらの交尾を見てムラムラしてしゃあないんやろ?
なら――コイツのツラに、お前の股座乗せんかいや」

「なっ…!?/え………?」

思わず声を揃えて疑問符を零すも、スカーキングは相変わらず悪辣な笑みを浮かべたままでこちらの反応など意にも介さず言葉を続けた。

「んん~、聞こえんかったかぁ? お前の股座を、コイツの顔面に乗せろと言うとんじゃ。憧れの怪獣王サマに欲求不満なドスケベまんこを奉仕して貰えるんやぞ?……ええなぁ? 最高の待遇やないか」
「嘘……っさ、流石にいくら何でも、ひどすぎます!」
「はぁ? さっきまで愛し合ってた相手やろ。まさか――今さら逆らう気か?」

唸る様な低音で凄まれ、シーモは目を見開いてビクリと体を震わせてしまう。
このままではまた彼女に謂れのない恐怖を与えてしまうばかりか、こちらもまたスカーキングと繋がったままの淫獄から逃れられる筈もない。だがそれでも、事に及ぶ前に彼女と“必ず助ける”と約束したからだ。
これからする事の苦しさと痴態、そして視界が塞がれてしまう不安と拒絶感こそ未だ拭えなかったものの、儂はひとつ溜息を吐くと覚悟を決めて、脅しに固まったままの彼女に優しく投げ掛ける。

「シーモよ、こんな事は、とうの昔に慣れておる。だから…儂を信じて、跨ぐが良い。其方が満足できるまで―――思うがままに、奉仕しようぞ」

実際に此処へ来る前―――儂がタイタン達の肉便器になっていた頃、誰かに下を掘られながら戯れとして雌ムートーやスキュラ達に何度も顔騎されていた経験があるため、特に抵抗もなく口にする。あの時は苦しさしかなかったが、今は違っていた。なるべく彼女の苦痛が和らぐ様に、そして奴の作り出した地獄からほんの少しだけでも心が解放される様にと、精一杯の祈りを込めての奉仕だ。

「ゴ、ゴジラさん……本当に、良いんですか?」
「あぁ、構わん。早く来るんだ」
「は、はい……では」

恐る恐るシーモが体を起こし、弾みで雌蕊から垂れる『ぐちゅ』と淫猥な水音が響く。余程待たせてしまったと罪悪感に駆られる中、性器から愛液がしとど漏れる様を見られる感覚にすら感じているのか、シーモは時折肩を震わせながらスカーキングと向き合う形で後ろ脚を曲げ、ゆっくりと儂の顔面に腰を落としていく。

「ぅぶ……ッ!♥ ふっ…ン゛っ……くぅ…っ♥」

噎せ返る程の雌の匂いが嗅覚を突き、ほんのり火照った臀部が真っ先に口許へ触れる。それはしばらくの間儂の視界が真っ暗闇に閉ざされ、尚且つ口すらも訊けない事を意味していた。

「ほぅ? ダチ公のまんこ舐められて嬉しそうやのぅ。それとも、誰かのケツに敷かれて孔を奉仕するのがお前さんの本当の性癖やったりしてなぁ? クカカ、どちらにせよ惨めやのぅ」

スカーキングの嘲笑が遠く聞こえる中、じわじわと視界が暗闇に閉ざされていく。
――そして、柔らかな感触が口許に触れた途端、むわりとした熱気と甘く濃密な匂いが鼻腔を満たした。途端に雌蕊特有の複雑な形状と鼻腔に広がる濃密な香りに意識を持っていかれそうになる。
まるで別の生き物のように、シーモの膣壁が蠢くのを感じる。
きゅう、きゅう……と、何かを求めるように収縮し、先端から滴る蜜が、ねっとりと口許を濡らしていく。

「はぁ、はぁ……し、失礼します、ゴジラさん……はぅんっ♥」
「謝るのはええから早よ己の牝穴押し付けんかい。これだから物分かりの悪いエロトカゲは始末に負えんのぅ」

シーモの臀部越しからスカーキングの苛立った声が聞こえる中、彼女の膣内は熱く潤っており、この濡れようからして充分に快楽を待ち望んでいるようだ。
けれどやはり他怪獣、それもかつての盟友にこんな恥辱を与える罪悪感はあるらしく、なかなか臀部を下ろせずに躊躇っている。ここは暫く二重の意味で苦しくなってしまうものの、それでも儂は彼女を慰め安心させる為にシーモの太腿に手を滑らせると、一息にぐっと下へ引き寄せた。

「ひゃあぁああっ!?♥♥♥」

突然敏感な箇所を粘膜で直々に触れられてしまう刺激に驚いたシーモが甘ったるい悲鳴を上げる。だが構わず、そのまま肉厚の舌を牙を立てないように熱く滾る秘裂へずるりとなぞり上げる。

「くっ、うぅ……はぁ、ぁあんっ♥♥♥」

胎内に舌がすんなりと入り、忽ち温い媚肉がねっとりと絡み付く。冷凍怪獣でも発情するとココは熱くなるのだなと思いつつ、そのまま舌で襞の輪郭をなぞり続けると忽ちシーモは甘い吐息を漏らし、腰を仰け反らせる。ふるり……と揺れるたびに、濡れそぼった花弁が口許をかすめる。
その奥から、とろり、とろりと零れる雌蜜――。
冷たく、どこか甘酸っぱいそれが、舌先を伝い、喉の奥へと落ちていく。

(これがシーモの味か……っ♥)

「むぐっ!♥ ぅ……!」
「んっ、ぁっ……!? あ、あのっ…苦しいですか?」

こちらに問いかけてくる彼女だが、時々漏れる嬌声は悦びの色に染まっていた。散々焦らされた秘部を直に刺激された事で快楽を覚え、無意識にもっと気持ち良くなりたいとねだる様に秘部を擦りつけてきたのである。
それに応えようと返事の代わりに雌蕊から標的を変え、最も弱い箇所―――硬く勃った薄紅の真珠を舌で強めに押し潰したり転がしたりすると、シーモはまた甘く可愛らしい鳴き声を上げながら悶えた。

「ぁあぁんっ♥ そ、そっちは敏感すぎて駄目ぇ……っ♥♥♥」
「んぶっ…!ふ、うぐ……ッ!♥」

ソコを舐られた事で彼女の腰が反射的に怯み、僅かに雌蕊から顔が離れそうになるが、決して逃さぬよう儂の両腕はシーモの太腿を強く固定したまま、彼女の急所を食み続ける。

「んぁあっ!? あっ、あふぅっ♥ い、イっちゃ……ひぅっ、あはあぁっ!♥♥」

数分もしない内にシーモは更に大きな喘ぎ声を上げて身体を大きく震わせた。感度を上げられた急所を攻められ続けた事で、呆気なく絶頂を迎えたのだろう。
しかし、まだ足りない――。
自らの花弁が、きゅんっ……と小さく痙攣し、欲求を訴える。
息も絶え絶えに、荒い呼吸を繰り返しながら、シーモはじわじわと尻尾を上げ、濡れそぼった秘裂を押し付けてきた。それに冷たさと息苦しさを感じて一旦舌を離すと、また焦らされたと勘違いしたのかシーモは荒い呼吸を繰り返しながら尻尾をぴん、と垂直に張り、更に熟れた雌蕊を強く押し付けてきた。

「はぁっ、ぅっ…ンンっ♥ わ…私としたことが、こんなにはしたなくて、っごめんなさいっ……!でも…ッ♥ お…お股が、とても気持ち良すぎるのぉっ♥♥」

淫らな熱に浮かされながらもひどく申し訳なさそうにする一方で、更なる快楽を欲していることを隠す気などなく激しく腰をくねらせると、秘部から自ずと新たな愛液が滴り落ちてきて儂の口許に降りかかる。
拒むよりもその熱烈な求愛に応えるべく、少し冷えてきた舌を再び開いた雌蕊にぴたりと押し付ければ、今度は躊躇いすら見せずにずりずりと捻じ込む。

「ぐぅ、ンン……!っ…ふっ…んぐぅ……!♥♥」

息苦しさで自ずと呻き声が上がるも、なぞり上げた拍子に溢れた温い愛液が儂の舌を浸しては媚薬よろしく性感を一層強く炙る。当然ながらそれは雄としての性欲を十分過ぎるほど煽り、こちらの男根が固くそそり立つと先端から溢れ出た嬉し涙が溢れてしとしとと腹筋を汚す。
文字通り尻に敷かれて苦しいのもあるが、十分過ぎるほど発情した雌の匂いに狂わされた事で儂もまだまだ雄なのだな…と再認識する中、ある事を頭の中で侍らせていた。

(………せめて今だけでも思う存分感じて、少しでも楽になると良い)

それは今だけでも良いから、シーモがスカーキングから受けたこれまでの非道な仕打ちを忘れて欲しいという願いを込めたものだ。彼女の怯えようからして、今に至るまで相当長い年月奴に甚振られ、理不尽極まりない扱いを受けてきたのは充分に伺える。
ならば儂の知らぬ所でスカーキングに散々今まで凌辱されてきた分―――生憎こちらは男根の挿入を禁止されている代わりに彼女を癒し、悦ばせるだけだ。
先程までとは打って変わって今度はこちらが主導権を握る形で、ある程度舌を伸ばし、思うがままにぐりぐりと掻き回す。舌先を、ひときわきゅんっと締め付ける箇所へと這わせ、ぐりぐりと押し付ける。
すると――シーモの太腿がびくんっと跳ね、切なげな甘い吐息が漏れた。

「ンッ……く、ぁぁっ! はぁ……ん♥ そこっ……そこ、良いぃ……っ!!♥♥」

“探り”を終え、前後運動に切り替わるとシーモは腰を浮かせ、わざと感じる箇所に当てる様に儂の舌を胎内で何度も締め付ける。どうやらこちらの方の愛撫が気に入ったらしく、じゅぽじゅぽと何度か抜き差しすると雌蕊がきゅん♥と締まり、また新たな蜜が滴った。
しかし、そんな健気な奉仕はおろか愛液を味わう時間も無作為に遮られる時が来てしまう。下で儂と繋がったままのスカーキングは眼前で繰り広げられる睦み合いに妬いたのか露骨に舌打ちすると、面白くなさ気に悪態を漏らした。

「フンッ……どいつもこいつも、ワシのマラよりこっちに魅了されおって…! おい、元王サマ――ワシを、忘れとるんちゃうやろなぁ……?」

瞬間、止まっていた筈の剛直が何度も儂の肉孔を前後し、奥へ突き上げられる衝撃に思わず仰け反ってしまう。

「……んっ、ん゛んぅううう゛ぅうっ!!♥♥♥」

突如として、体ががくんっと揺れた。
その衝撃に抗えず、舌がシーモの胎内からずるんっと抜け――秘裂がいやらしく名残惜しげに、ひくんっと震えた。突然の中断に、シーモの身体がびくんっと跳ね、背中を弓なりに逸らす。

「あっ、や……!? う、そっ……!? や、やだぁっ!♥」

甘い絶頂へと昇りつめようとしていたのに、一気に突き落とされた戸惑いと焦燥。
必死にスカーキングと向き合うも、無駄だと分かっている――それでも、彼女は哀願せずにはいられなかった。

「ご、ご主人様ぁ、っ今動いちゃダメですっ!♥ 舌が、っ……ゴジラさんの舌が、離れてぇっ!♥♥♥」
「あぁん? お前も散々コイツにクンニされて随分乗り気やったやないか、この浮気者が。後で躾けたるさかいに覚えとけよ…?」
「そ、そんなぁ……! あんっ、そこぉっ♥♥ しびれるぅ…!♥」

律動を再開されても、決して奉仕は止めなかった。寧ろ少しでも緩めれば自分が窒息してしまいそうで必死だった。
塞がれた闇一色の中で、過敏になった上下の“口”が次々と責め立てられる。
シーモの腰が揺れるたび、くちゅ、くちゅっ♥と淫靡な水音が響き、それがまるで脳を直接犯してくるかのように錯覚させる。
――いや、錯覚ではない。
スカーキングの剛直が奥へ奥へと抉るたびに、下腹部が痺れ、奉仕の意識すら霞んでいく。その上、スカーキングが再び男根で儂を乱暴に突き上げてくるせいで下腹部からはばちゅばちゅと肉同士がぶつかり合う卑猥な音が響いた。

「うぼぉっ、 ぐゥッ、ん゛むぅううううっ!!♥♥♥」
(お、重いっ…苦しい……ッ!)

シーモの重量と揺さぶられる動きによって生じた圧迫感に思わずくぐもった声を漏らしてしまう。それでも、彼女が後ぐされなく気持ち良く絶頂できるように陰核を、花弁と胎内を味わい尽くすことは止めず、懸命に奉仕を続けた。その内に本気汁と思わしき粘ついた液体が味覚や喉奥に垂れ落ちて執拗な息苦しさを覚える中、下の口も結腸近くまで穿たれ、いよいよ我慢の限界に達しようとしていた。

「ふーっ……! ぅぶ、ン゛ンッ……!!♥♥」
「はぁっ……あっ、あ゛あっ…♥ ま、また……っまた、イッちゃいますっ……! ゴジラさ…っわたし、もう……ッ!!♥♥♥」

臀部だけでなく花弁を頻りに震わせ、限界を訴えかけてきたシーモにこちらも応えるべく彼女の秘所を深く貪ると、スカーキングのモノが埋まったままの後孔もまたグボグボと抽挿を繰り返してきた。
その動きは奥に窄まっている結腸を穿きかねない勢いで、苦痛よりも先に今にも射精してしまいそうな感覚に苛まれる。身を捩って何とかそれらから逃れようとするも、シーモの体重から来る尻圧とスカーキングによる拘束のせいでそれも叶わない。

「くっ……んんッ! んぶっ! ン゛っ……! んぼぉお゛ォおっ!!」

熱を帯びた肉槍が、何度も何度も儂の粘膜を擦り上げ、最奥の窄まりをぐりゅっ、と押し広げる。
奥へ到達するたび、ぶるるっと腸壁が痙攣し、全身が震え上がる。しかしそれ以上に辛かったのは結合部から響く淫靡な粘着質の音だ。それは間違いなく自分の股座から聞こえていて―――いや違う、断じてこちらが感じているわけでは、ない。――ないはず、なのに……ッ……!
後孔の肉弁が切なくスカーキングのモノを締め付ける度に、彼の先走りによる淫らな粘液が漏れ出ては、それを潤滑油に掻き回すようにして怒張が抽挿されるのだから堪らない。
そして無情にもモノが肥大化すれば張った雁首は疎か、周囲に張っている血管ですらも肉壁越しにはっきりと認識できてしまう。それは儂の絶頂を促しているも同然で、次第に、意識が塗り潰されていく。
闇に閉ざされていた視界が、ぶわり、と白く霞む。
熱く煮え滾る奔流が全身を駆け巡り――、脳髄が、じわじわと痺れていく。

「うぼォッ! ンッ……ン゛ッ…んう゛ぅ~っ! ん゛んんんんっ♥♥!!」
「お? そろそろイキそうか? 丁度ええ、己の奥までマラが届くでぇ! ほれ、苦しみながらケツまんこでイけ!オラァっ!!」

スカーキングの咆哮、シーモの蕩けきった悲鳴、そして――ぼこぉ、と腹の奥を突き上げられ、内臓ごと裏返るような衝撃が走る。
その瞬間、全身が弾けるように痙攣し――、

「ん゛ん゛っ……~~~~ッッ!!!♥♥♥」
「ひぁ……っ!! んぁあ゛あ゛あ゛っ!!!♥♥♥」

どぷっ、びゅぐっ♥ぶしゃああああっ!!
肉孔を灼くような熱が叩きつけられ、顔面には噴き出した飛沫が容赦なく降り注いだ。それに呼応するかの如く儂の脳髄までも全て奴の朱色に染め上げるかのような悦楽に浸っていく。
下の方はともかく、辛うじて窒息こそはしなかったが思いっきり潮を噴かれたため、その余韻としての残滓が鼻腔内や口内にまで入り込み、それが何とも言えない苦味となって舌に絡みついてきた。

「はっ、はひっ……♥ ん…っあ゛はぁぁ……っ♥」
「ん、んぶっ、ごぽっ……!」

「フヒヒヒ、まさかまた同時絶頂するとはな。やはり肉奴隷同士はとことん気が合うんやのう。ええ?」

べちん、と尻を叩かれ、儂は反射的に身を震わせる。だがそれは痛みからくるものではなく、屈辱に近いものだった。その衝撃で何とか意識を取り戻すと男根がずるりと抜かれ、ようやく儂の中に埋まっていた異物感が取り除かれる。

「シーモ、呆けてないでそろそろ退けや。この元王サマの無様な面を拝みたいからなぁ」
「…………はい、ご主人…様」

シーモが息を荒げつつ、そっと腰を上げる。
こちらの頭部が解放され、ようやく冷えた空気が肺に入り――ひゅう、と浅い呼吸を繰り返す。
だが、彼女の視線は相変わらず怯えていて、実に申し訳なさそうに、僅かに伏せられていた。
そして儂の方はと言うと、絶頂の余波と、身体の奥に残る痺れが抜けず、まるで泥の中に沈んでいるかのように――動けない。
指先すら力が入らず、起き上がることすら叶わない。

「はぁっ……は、あ……」
「フヒヒ……最初に比べりゃ、ええツラになったな? しかもダチ公に敷かれてケツアクメ決めるわ…あの誇り高いかつての怪獣王サマの面影なんざ、どこにもあらへんなぁ?」
「…………っ」

長い五指が顎をぐいっと持ち上げ、目の前にスカーキングの勝ち誇った顔が迫る。
拳を――握り締めようとする。
……だが、指が震えるだけで、力が入らない。悔しいが、奴の言う通り快楽に溺れかけてしまったのは事実である。

「そんで、彼奴のマン汁の味はどうやった? あれだけ執着してた相手や、嫌ほどたっぷり堪能できたやろ?」
「……っ」
「ほら、正直に言わんかい。ん? ほれほれ」
「うっ、ぐ……」

再び尻を撫で回されて嫌悪感に身を捩るが、それでも奴は離そうとしない。それどころか今度は指先で胸筋をなぞり始め、生理的な嫌悪感でぴくりと戦慄くとこれまた嘲笑交じりの痛罵を放つ。

「はっはぁ! こりゃまた随分と敏感になってるやんけ! 彼奴同様もう雌の体そのものやんか、怪獣王サマ」
「ぐっ!? あ……っ!」

軽い口調とは裏腹に、なかなか返答してくれない苛立ちが入っているのか頬を片手で掴まれると力を込められ、鋭い痛みが走る。しかしそれでも、ここで奴の問いに対してあっさりと答える訳にはいかなかった。

「まぁ、どの道己はワシの肉便器や。この鉱石がある限りはな」
「ふざけた、事を……!」
「ふふ、安心せい。お前さんは今晩中に壊したりせんからな。誰が本当の“ご主人様”か判るまで調教するまでや」

言葉を続けつつ、スカーキングの空いた手―――赤い炭を纏った指が儂の太腿を這い、ずっ…と音を立てて表面をなぞる。どうやら自らが『抜いた』証を塗り付けているらしく、そのざらざらとした感触が酷く気持ち悪い。

(こ、の……!)

――これほどの屈辱、耐えられるはずがない。
皮膚を裂かれるよりもマシだとしても、誇りを踏みにじられ、意志を捻じ伏せられることの方が――遥かに苦痛だ。
それならば、せめてひとつだけやっておきたい事があった。

「……スカーキングよ。話がある」
「あん…?」

実際に顎を固定されている状態なので口を動かすのがやっとだったが、何とか言い切ることは出来た。すると案の定、スカーキングはすっと片手を儂の顎から退ける。

「お前さんから言いたい事とは珍しいな。まぁええ、せめてもの慈悲として聞いてやるわ」

相変わらず憎たらしい態度と口調だが、一応約束を守るつもりはあるようだ。そして手が外されると儂は息を整えつつ―――そしてシーモに絶望させてしまうのを承知で、改めてスカーキングに投げ掛ける。

「我々の負けだ。儂は其方を……娼館の主として認めよう」

途端、スカーキングは呆気にとられたかの如くぴくりと眉を動かした。それにつられて予想通り、傍らのシーモも言葉を詰まらせて驚愕している。

「え? そんな……ゴジラさん……嘘ですよね…? ねぇ……?」

シーモの視線が顕著に揺らぐ。
縋るような眼差しでこちらを見つめながら――だが、どこか怯え、泣き出しそうに見えた。

「ふ……クッカカカッ! お前さんも、やっと悟ったか、元怪獣王サマ!いやぁ、ワシはな、最初っからこうなると分かっとったでぇ?」

わざとらしい褒め言葉を織り交ぜるスカーキングを尻目に、シーモは強く不安げな表情でこちらを見つめている。確かに、今までずっと彼女の味方だった者が急に心変わりしたのだ。当然の反応だろう。

(シーモ……許せ。お前を裏切るつもりはない。だが――こうするしか、なかったのだ。このままでは全てが終わる。ならば、どんな手を使ってでも――)

「だがその前に、新たな主の顔を近くで見ておきたいのだ。だから…スカーキングよ。契約の代わりに口付けしないか?」
「………ああ、ええで。相手は元怪獣王サマや。別に減るもんじゃあらへんしな」

こちらの提案にスカーキングは一瞬ぽかんとした顔を見せた後、ニヤリと笑って承諾する。
傍らからシーモの縋りつくような視線を痛く感じる中、スカーキングは前屈みになると儂の口許に唇を触れさせた。当然ながら暇も置かずすぐさま舌を差し入れてきて、ぬめりを帯びた粘膜が口腔内を蹂躙していく。

「ん、ぅぐっ、んぅっ……♥」

娼館に務める内に何度も味わった濃厚な接吻。それは、シーモとの口付けとは――まるで別物だった。
温もりも、愛しさも、一片もない。
あるのは、ただ粘つく唾液と、不快なまでに絡みつく舌の動き。
肌が粟立つほどの悪寒が背筋を駆け抜ける。

「んッ……ンンゥッ!」

しかしどんな感覚が来ようと今は我慢するしかない。これも全ては“やるべきこと”のためだ。だから心中で歯を食い縛って耐え、ひたすら相手の舌使いを受け入れる。

「ちゅく、っぅ……! んんっ、うう…っ♥ はぁっ」
「んむ……っフヒヒッ、何や、もうスイッチ入っとるんか?」
「……っ」

雄同士の口付けに飽きたのか、すぐに口を離される中でスカーキングは愉快そうに笑うが、こちらは決して笑い返す気などない。ただ、返事としてこちらの懐に十分届く程の距離を縮めてきた相手の目を見据えながら、スカーキングの唇が離れた、その一瞬。
――今だ!!
迷いなく、閃光のように腕を走らせる。
目標は――ヤツの懐からぶら下がる、青い鉱石。

「へっ…? 己、何をしとるんじゃ!」
「…………はっ、油断しすぎたな」