今までとは一変して自信なさげな返事が背中越しに聞こえます。未知の体験に戸惑ってしまうお気持ちはわかりますが、これ以上余計な事を言うまいと一旦口をつぐみ、ただ彼に身を任せます。
さて、どんな触り方をして頂けるのでしょう?ちょっと期待してしまう自分がいるのは否めません。そんな事を考えていると背中にひんやりとした感覚―――教えられたとおりに香油を私の背中に塗っているようです。その手つきは恐々としているようで、少しくすぐったいものの心が安らぐ気がします。
「先ず背中から摩るんだよな?痛かったら言ってくれよ」
「はい、お手柔らかにお願いしますね」
たどたどしくも力強い指圧がオイルを纏いながら肩甲骨の周りや脇腹から背中全体へと、私の凝り固まった部分を押し込んでいきます。すっかり硬くなった筋肉がゆっくり解れていく感覚もですが、何より想い人に触られているという実感から来る気持ちよさに、私は思わず小さな溜め息を漏らしてしまいました。
「はぁ…ん……」
「うぉ!?」
突然漏れ出た吐息に驚いたのか、一瞬だけ手が止まります。
「い、痛かったか?」
「いいえ、大丈夫ですよ。続けて下さい」
「……ああ、判った」
こちらが微笑んで答えると、コングさんもほっと安堵した様子で按摩が続けられます。
くちゅ、にちゅり、ずりずり……と音を立ててオイルの滑りに任せてコングさんの指が私の背中や腰を這い回ります。ただ触っているのではなく、私の凝り固まった部分を探し出すように摩っているのです。それがまたこそばゆくて気持ちいいのですから思わず声が出てしまいますし、不意に体がぴくりと跳ねる事もあります。
「あっ……そこ、いい……」
「お、おう……ここか?」
「はい……その、もっと強く押してもらえますか?」
「こうか?」
コングさんの指が指定された箇所―――私の腰や肩甲骨周りを揉み解していきます。その度に私は吐息を漏らし、尻尾をゆらりと揺らしてもっとして圧して欲しいと強請りました。
「あぁ……あ、あんっ…そ、そこ好き……♥」
「シーモお前……変な声出すなよ」
「だって、貴方の力加減が良すぎるんですもの……あっ、うぅん♥」
「そっ、そうかよ……なら良いけど」
最初は戸惑っていたコングさんも少しながらコツを掴んだらしく、初めは遠慮がちに圧していたのとは一変、今では私の疲れが取れるのを嬉しいと思ったのか積極的に揉んできました。その指使いはとても力強く、かつ的確で、私の体に溜まった疲労やコリが瞬く間に解れていきます。
「はぁ……初めてなのにお上手ですね」
「そうか? まぁ、アンタの体すげー固いもんな。あちこち凝ってそうだ」
「えぇ、自分で何とかしようと思っていましたがどうにもならなくて……あ、そこはもう少し下です」
指し示すかの如く自分の尻尾を上げ、未だ手付かずの臀部を晒します。
「下か……この辺か?」
「はい、そのままお尻まで行って下さい」
言われるがままにコングさんは私の指示に従って下へ下へと手を滑らせ、やがて尾の付け根辺りに辿り着きます。その時彼としては不注意だったのでしょうが、そこを掠めた途端私は叫び声を上げてしまいました。
「ひゃあっ!?」
「わ、悪い! まさか尻尾はダメなのか?」
「っいえ、駄目ってわけではないのですが…尻尾辺りは敏感なので、優しくお願いしますね」
「あ、あぁ……」
申し訳無さげに呟くコングさんに私は安心させるべくにっこり笑って見せました。が、彼は何故か顔を真っ赤にして目を逸らしてしまいます。何か恥ずかしい事でも言った?と思いましたが、これから臀部を直々に触るんですもの。照れるのも当然ですね。
「それじゃ、アンタの尻触るけど……いいよな?」
そう問いかけつつコングさんは意を決した様子で、オイルで濡れた手でそろりと撫でてきました。その手つきはまるで儚げな壊れ物を扱うかのようで、とても優しいものです。
彼の手はオイルの滑りに任せて臀部全体を包み込むように触れ、柔らかさを備えた双丘の感触を楽しむかのように何度も何度も往復を繰り返します。
「んっ……ふっ、んんっ……♥」
圧してくれないもどかしさからか、自然と口から吐息が漏れ出ます。それは普段から私が出しているものとほとんど変わりありませんが、今の私の体はいつも以上に火照っており、自ずと呻き声を合わさって吐き出されていました。
「こ、コングさん…そろそろ強く圧して頂けませんか?何だか、むず痒くて……」
「お、おう……ココか?こんな感じか?」
私の訴えに応えるかのようにお尻への指圧が始まります。先程までの優しげなものとは違い、今度は力強さを感じるものでした。指先から伝わる圧が心地よく、一押しされる度に甘い電流が私の背筋を駆け抜けます。
「んくっ……は、はい……そんな感じです……はぁ、ん…♥」
「さっきより声出てるけど大丈夫か?」
「いえ…気持ちよくて、つい声が出てしまって……」
歩く際によく動かす箇所である以上、私には自覚がありましたがここまでとは思いませんでした。しかし、それが彼の大きな手でぐにぐにと指圧され揉まれて、じわじわと解されていく快感はとても心地よいものです。
「へぇー…そんぐらい凝り固まってたんだな。勉強になるぜ」
「えぇ…あ、そこ…いいです。もっと強くても平気ですよ」
「判った。これくらいか?」
「はい……はぁ…ん、うぅ…ぁ、あぁうっ……!」
私の応答に応えて、指の腹が強く押し当てられます。ぐりぐりと押し込まれる度に甘い声が漏れ、全身がぴくんと震えました。
「シーモ、もしかして痛いのか?」
「いえ……全然…♥」
「そうか、ならもっと力入れていくぞ」
更に指が強めに押し込まれ、思わず声が零れてしまいます。痛みは微塵も感じないどころか、むしろその逆――強い圧で体の奥底から疲労やコリが解される感覚が堪らない程気持ちいいですし、何よりも想い人に触られているという実感が湧いて、体が勝手に反応してしまうのです。
「あっ、はぁ……あっ♥ ふぁっ…そこ、凄ぃ……♥」
「ここが良いのか?」
「はいっ♥もっと、もっとぉ♥♥」
はしたないおねだりを漏らしてしまったことに息を呑んで恥じらいを感じている暇などなく、ぎゅむ、と臀部に指が深く沈み込みます。そこを圧される度に腰の辺りにぞくぞくとした刺激が生まれました。
「うぁ……ぁあぁぁ…♥♥」
(やだ…変な声出ちゃいます……!)
オイルの滑りもありますが、ここまで丹念にお尻を揉まれるのがこんなに気持ち良いなんて知りませんでした。今まで自分の体のケアすら怠っていたので仕方がないのかもしれませんが、それでもこれはあまりにも予想外でした。その上、時折足の付け根から「ぐちゅ」と水音が聞こえるので、これはオイルの滑りによるものだと自分に言い聞かせます。
「どうした?シーモ」
「い、いえ……何でもありません」
私の異変に気付いたコングさんが尋ねてきましたが、まさか「貴方の手に感じています」と言うわけにもいかず、慌てて誤魔化しました。すると彼はそれ以上追及することもなく、「ココはそろそろ良いか」という言葉を合図に、コングさんの指先は私の太腿に伸び、先程と同じようににゅりにゅりと撫でさすっていきます。
「はっ、ああぁん♥」
オイルをたっぷり塗りつけた指先が両脚を滑りながら―――時にくっと押し込んだりするその手に私は翻弄されっぱなしでした。コリが解れるのは勿論、その度に「んんっ♥」と甘い声が出てしまうのが恥ずかしいのです。
「うっわ、脚まで硬いな……どんだけ凝ってんだよ」
「んっ、くぅ…うっ♥あ、あぁっ♥」
コングさんが呟きますが、私にはそれに答える余裕はなく、ただひたすらに押し寄せる快楽の波に耐えるので精一杯でした。
このまま秘部に触れてしまったら…そんな不安が脳裏を過りますが、それはそれで興味がないと言えば嘘になります。その傍らで脹脛から踵にかけて指が這うと、またしても私の口からは艶やかな声が漏れ出ていました。
「はぁ、あ、あ……あはぁ♥」
「また随分声上げちゃってるけど、ココが良いのか?」
ただでさえオイルで滑りが良くなっているのに、敏感なツボが沢山集中している足裏がぐにぐにと押され、敷いたタオルがたわむほどにびくんっ、と大きく全身が跳ねました。
「は、はい、そこもおねが……ひゃうぅうっ!♥♥」
「おっとすまん、力入れすぎちまったかな?」
一際効果的なツボらしい箇所に指を捻じ込まれ、思わず悲鳴を上げてしまいました。しかしそれを面白いと思ったのか、それとももっと聞かせてとばかりにコングさんは何度も指を押し込んでくるではありませんか。
「ひぃうっ…♥ あ、ぁあ……!♥」
お尻の時よりも強めにぐりぐりと圧され、声が漏れるとまるで全身の血流が一気に良くなったかのように身体中がぽかぽかしてきて気持ち良くなってきました。これが噂に聞く「血行促進効果」というものでしょうか? 氷河期を起こす程の冷気を操る生態柄あまり体温は上がりにくい筈なのですが、この感覚は初めてのものでした。
「はぁ……それにしてもすごいな、何処を触ってもカチコチだな。本当にちゃんと休んでるのか?」
「えぇ……一応はよく眠れてます…うぅんっ♥」
「へぇー? じゃあ何でそんな疲れ切った身体になんのかね」
そう言われても仕方のない程、私の体はとても凝り固まっていたようです。無理もありません、今に至るまでスカーキングの気まぐれで何度も甚振られ、苦痛と屈辱の日々を送っていた為にマッサージとは無縁の生活を送っていたからです。
「それは…あの、スカーキングの下で色々ありまして……」
「ふーん、まぁ…奴の扱い方からして疲れも溜まるよな」
「はい……お察しの通りです」
私がこれまでどのような目に遭わされてきたかその詳細を話すことはできませんが、それでも彼は納得してくれたようでした。
「……でも、貴方にこうして気持ち良いことをしてもらうと疲労が抜けていく気がします」
「そっか、そりゃ良かったぜ」
足ツボを一頻り処置し終えると、オイルでぬめる掌が一度施術した箇所を這い回り、時折肩甲骨を撫でられれば心地好さに吐息が零れ落ちます。自分でも驚くほどすっかり出来上がったのではないかと思ってしまうくらいに体は解れ、疲労感は消え去っていました。
(あぁ…♥ この人に毎日こうして触れてもらえたらどれだけ幸せでしょうか。いっそ彼に思いを伝えた方が楽になれるかもしれませんが……それは流石に軽率ですね)
そんな事をぼんやりと考えつつ、彼に施されるマッサージを堪能していると、今度は背中側から彼に声をかけられました。
「シーモ…ちょっと恥ずかしいだろうけど、そろそろ仰向けに寝転んでくれないか? でないとアンタの疲れが全然とれなさそうだしさ」
「は、はい…っ!」
(とうとうこの時がきましたね……)
身を翻すべく緊張で震える手を何とか動かしながら両腕を突っ張らせる中、彼がこちらを見下ろしてくるのを感じます。
(ど、どうしよう……心臓がドキドキする……!)
私は胸の高鳴りを抑えようと深呼吸を繰り返しました。自分から女性に免疫を付けてもらうためにマッサージを切り出した身とはいえ、いざこれからコングさんに剥き出しの乳房を見られてしまうと思うと恥ずかしくて堪りませんでした。
「大丈夫かシーモ?」
「だ、だいじょうぶ……です……っ」
心配そうな彼の声が降り注ぎますが、未だに顔を合わせるのが恥ずかしかったので、俯き加減のまま答えます。すると、
「心配するな。言ったろ、これはあくまでマッサージであって変なことはしないって。オレを信じてくれ」
「……っ!」
優しい声色で囁かれ、私は不意に顔を上げました。そこには間近で私の恥ずかしい声を聞いていたにもかかわらず、相も変わらず穏やかな面持ちの表情を浮かべたままのコングさんが鎮座しています。
女性として肝心な箇所を晒す困惑もありましたが、彼から真摯に「信じてくれ」と促された以上、拒む理由などないでしょう。
「はい……判りました」
「よし、いい子だ」
微笑む気配を感じると、言われるがままその場でごろりと身を翻します。途端、私のお股につぅ……と熱いものが流れてきた事に気付きました。恐らくお尻に塗られたオイルがソコに垂れ落ちたのでしょう。そう自分に言い聞かせますが、その僅かな感触は私の身体を火照らせるには十分でした。
そして背中にタオルが触れる感触がする中、肝心の箇所―――重力に従って大きな乳房がたぷんと下へ流れると、向かいからごくりと喉を鳴らす音が聞こえてきました。
「うわ、すっげぇ…絶景じゃねーか」
「わ、私だって女なのでこれぐらいはありますよ。お陰様でよく肩が凝るんですけど……」
「あぁ、そりゃ大変だな。じゃあ…早速始めるぞ」
その言葉を合図に、私の頭部にいるコングさんの指先がちゃぷ、と音を立てて油壷から新たなオイルを纏わせると、まず最初に私の両肩に伸びました。そこはコングさん程ではないですがそこそこ筋肉がついており、腕を含めると多少なりとも隆起はありますが、彼の手が対の輪郭をなぞると少しずつ香油が素肌に馴染んでいきます。
「んっ、くっ……♥」
「すっごいな…そこらの雌コングもだけどアンタもなかなか筋肉あるじゃねぇか」
「えぇ、まぁ……それなりに鍛えてますから…」
「意外と鍛錬とかしてんだな。それなら尚更、しっかり解してあげないとな」
そう言うと、コングさんの手つきがより一層力強さを増していきました。オイルのおかげもあって痛みは全く感じないどころかむしろ心地好さが勝っており、気付けば無意識のうちに再び吐息が漏れ出ていました。
「ふぁ……あ、あぁ……♥」
「ん? ここが気持ち良いのか?」
話している間にも彼の手は肩を通り過ぎて乳房―――ではなく、腹筋と脇腹を優しく撫で回していきました。
「ひゃっ!? あ、ああ……っ♥♥」
思わずびくん、と腰が跳ね上がりましたが、コングさんは特に気にせず同じ箇所を何度も往復し、時には掌全体で撫で回すように揉みほぐしてくれます。その度に私は声を抑えることができず、ただひたすら快楽に身を震わせ続けるしかありませんでした。
(ああっ、お胸触って欲しいのにぃ……!)
お尻に続き、女性にとって敏感な箇所を敢えて避ける気遣いは有り難いのですが、それが却って焦らされているようで苦痛に感じました。その間にも、手付かずの乳房―――特にコンプレックスの陥没乳首周辺が疼いて仕方ありません。耐え切れず私は目を開き、コングさんに視線を送りました。途端、逆さまの彼の顔と目が合い、慌てて目を逸らします。
「ん、どうしたシーモ?」
「……っ!♥」
唇を噛み締めて意地を張るも、鼓動はうるさいくらいに高鳴っていて、今にも口から飛び出してしまいそうでした。それでも止め処ない緊張をどうにか堪え、再び彼にお願いをします。
「あの、その…私のお胸を……マッサージして欲しいんです……っ! 貴方の手でいっぱいほぐしてくださぃ……!」
「……判った」
快諾に安堵したのも束の間、私の両胸、特に乳輪周辺に冷たいオイルがたらりと垂らされました。
「は、はぅっ……!」
敏感な箇所、それも長年のコンプレックスである陥没したソコの周りにオイルを注がれ、私は息を飲みました。しかし、彼は構わずそこにオイルを馴染ませるかのように掌をずりずりと滑り込ませていきます。
「んんっ……♥」
「すっげ…癖になるわ、これ……」
「は…っんっ♥ も…もっとさわってぇ……うぅっ♥」
「そうか? じゃあ遠慮なく……」
そう言ってコングさんは香油に塗れた両手をぬるぬると動かして、私の両の乳房を包み込むようにして掴んできます。オイルの滑りの良さも相まり、彼の手が頻りに動く度お胸がぐにゅりといやらしく形を変えていきます。
「あっ♥ はぁ、あぁんっ♥♥ こ、コングさぁん……♥♥」
先程までとは全く違う感覚が襲い掛かり、私は思わず声を上げてしまいました。それを見聞きしたコングさんは感嘆の溜息を吐くと、さらに激しく手を動かしていきます。