狭い小屋内で、複数の呼吸と金属音が重なると、その合間にモスラとゴジラの断片的な声が交錯した。
「っ……ぁ、はぁッ……! い、いやぁっ……あぁ……!」
「……は、あ゙ッ!♥ あ、あぁッ!!♥♥」
メカゴジラがモスラを抱きかかえた形で後ろから突き上げ、広げられた両脚がビクンと跳ねる。
その真正面―――少し離れた場所ではギドラに組み伏せられた形で陵辱されているゴジラが、蕩けきった表情で嬌声を上げていた。
「ぎ、ギドラぁ…! すぐ、っ辞めさせろ……! モスラ、だけはぁ……っああぅっ!♥」
「それは無理な注文だな。アイツはわざわざ、貴殿と同じ道を辿ることを選んだのだ。
……貴殿が護ろうとした女王が我らの下へ自ら歩いてきたなら―――王として、男として目を逸らす理由など、あるまい?」
「ひッ……あ、ああぁっ! ごめっ……!ごめんなさい、ゴジラぁぁ……!!」
泣きじゃくりながら謝るモスラの躰を、背後からメカゴジラが無慈悲に突き上げる。
「女王サマってば、こんな時でもゴジラゴジラか……どんなに叫んだところで、アイツには聞こえてないんだよッ!」
口調は荒くても、メカゴジラは愉快そうに笑いながら淫紋の光が輝いたままのモスラを激しく揺さぶる。
突き上げる度に膣内から溢れさせる淫らな体液に入り混じり、淫靡な打突音が室内に響く。
「ぁ……あぅうっ……! やぁっ、やめっ……ひぁぁあっ!!」
哀しげな咆哮を上げた途端に躰がびくびくと痙攣する傍らで、張型を強く咥え込んだままの結合部からはとめどなく淫液とオイルが溢れる。
「あれぇ〜? 嫌がってる割には随分気持ち良さそうじゃん、女王サマ。王が犯されてるところを見て興奮しちゃった?」
「ち、が……ッ! そんなのっ、じゃ……あ゙ぁっ!」
「それとも……その愛しの王サマのモノと長さも太さもそっくりそのまま真似たモノが気に入っちゃったとか? 案外アンタも淫乱だねぇ」
実際にモスラのナカにぎっちりと埋まっているモノは、鋼鉄とシリコンで構成されたことを除けば怪獣王のソレを模して取り付けた偽物だというのに、淫紋によって気が狂う程高められたモスラの躰は素直に快楽を貪り、それと連動するように蜜壺がきつく締まった。
(こんなの、私が受け入れたモノじゃないのに……!)
『偽物』と分かっていても、雌にとって弱い箇所を突かれる快感には抗えない。ましてやそれは“姿こそ怪獣王を模しているものの、内部はギドラの悪意を宿した機械人形”相手なのだ。
その罪悪感が、淫紋をさらに強く輝かせた。
そして否応なく訪れた絶頂は、当然ながらゴジラにも伝わり―――その脳に、モスラの快楽が流れ込んでくる。
「だ、だめだ…ッもう、あっ……ああっ! んはあぁ゙っ!!♥♥」
がくん、とゴジラの腰が跳ね、すっかり薄くなった精液を吐き出しては床を穢す。
それでも、自身の臀部を打ち付ける速度は変わらず、ギドラはゴジラの両腕を後ろから乱暴に掴み、肉孔の奥深く目掛けて双頭の男根を穿ち続ける。
「まだだ。誰が休んで良いと言った?」
「……っうぁぁあぁっ!!♥♥」
快感と屈辱で頭がいっぱいになった瞬間、嬌声とも悲鳴ともつかない声が上がり、またゴジラの奥に向けて律動が叩きつけられる。
すると、それに反応したかのようにモスラも先程達したにも関わらず一際甲高い声で鳴き――そして両者とも絶頂へと至る。
「「ふぁあっ!!? あ゙ぁ~~ッ!!♥♥」」
両者に刻まれた淫紋が一際強く輝き、重なった嬌声が室内にこだました。
「あははっ、女王サマとゴジラったら同時イキしちゃったんだ〜! ウブだねぇ」
「それ程までに互いの絆というものは硬いという訳か……なんと涙ぐましいことよ」
言葉とは裏腹に、ギドラはぐりぐりと腰を押し付け、更にゴジラを更なる恍惚に追いやる。
宛ら嫉妬をまとったかの如く、双頭の男根は未だ硬度を保ったままで、彼の腰が砕けそうになる度に揺さぶりながら引き戻す。
「く…あぁッ!♥ や、やら゛っ……! あうぅ……!!♥♥ やめ…ッ!♥♥」
淫紋、或いはそれぞれの奥に入ったままの異物が動かされることによってどちらかが達せば床に白濁や愛液、潮が派手に飛び散り、室内を淫靡な空気で満たす淫欲地獄。
そんな中でも、モスラとゴジラは互いに同じ思考を巡らせていた。
(……違う。こんなのは……)
(こんなのは……絶対に違う……!!)
金色、或いは鈍色の悪意に穿かれ、強制的な絶頂を繰り返しながらも二人は同時に心の中で叫んだ。
なのに現実は残酷で、ギドラはそんな二人の思考などお見通しであるかのように、愉しげに笑った。
「そう悲観するな。貴殿らが“愛し合っている”ことに変わりはない。最も…愛し合う者同士が、このような行為に耽っている時点で既に破綻しているのやも知れぬがな」
「っあ……! やめて…言わないで……!!」
否定されたくない。古来からずっと抱えていた想いを、汚れた欲望で踏み躙られたくない。
そんなモスラの心を嘲笑うように、ギドラは追い討ちをかける。
「だが……理性も誇りも、肉欲すらも捨てきれぬままで、貴殿らは互いを求めたのだろう? それこそ愛がないと言えるのか?」
「……っ!」
天色の瞳から涙を零しながら首を左右に振り、嗚咽すら漏らしているモスラに構わず、メカゴジラは「自分を無視するな」と言わんばかりに自分本位な抽挿を繰り返す。
その乱暴な動きに、モスラの腰も自然と揺れてしまう。
「っひ!? あんっ……や、やめっ……!」
「兄ちゃんとお喋りするのもいいけどさぁ、今はこっちに集中してよ」
結合部からどちらのものともつかない液が飛び散り、飛沫となって床に飛び散る。
それと同時に互いの嬌声がほぼ苦痛に塗れたものになっていき、下手するとどちらかが腹上死しかねないような恍惚へと追いやられていく。
「や、やめへぇ、っギドラぁ……!♥ あ、あ゙っ!♥ んお゙ぉっ!?♥♥」
「だめっ、だめぇえ、これ以上イカされたら…死んじゃうぅっ!!」
哀願をかき消すかの如くばちゅばちゅと水音が響き、ギドラが嗤う。
「もう死んでいるではないか、貴殿らが“愛し合った”証としてな……そのまま、惨めに達しろ」
直後、どちらかの肉壁でごちゅり、とえげつない音が立った瞬間、モスラとゴジラの嬌声が重なり合って反響し、限界を迎えた二人の躰が激しく痙攣した。
「「お゙ッ……!!?♥♥♥」」
全身を駆け抜ける強烈な快感と、まるで火花が散るかのような錯覚。
びくんびくんっ、と腰が跳ね上がる度、一際強く互いのナカに埋まったままの異物をきつく食む。
「く、っ……!」
「やばっ…!」
ギドラに続き、メカゴジラですらも苦しげな声を一瞬上げながらも、互いのナカに精を吐き出す。
怖気が走る程に熱く長い射精。
その熱は筆舌に尽くしがたい程に燃えており、胎内までも溶かしてしまいそうな程の衝撃だった。
「「んぁっ……! あ、ああぁあ゙っ……!!♥♥」」
ソレらが注ぎ終わると忽ち快楽の源泉が冷め、その余韻に浸るようにゆっくりと腰を揺らせば、まだ硬さの残る男根がずるりと引き抜かれる。
「……はぁ……」
「ぁ……う……」
もう何度目の絶頂かも分からないまま、モスラもゴジラもまたがくりと項垂れる。
終わりなき快楽地獄からようやく解放された。そんな安堵よりも互いへ向けていたはずの感覚が、今はどこか遠くでちぎれたまま戻らないという、不気味な空白が胸を支配していた。
そして、宴の終わりを示すかのように淫紋が一際強く輝き――部屋の中は静まり返った。
どれほど時間が経ったのだろうか。熱気の残滓が沈殿した小屋の中で、ギドラは満足げに翼を払った。
その動作一つで、部屋を満たしていた重圧がゆっくりと緩む。
「ふむ……少しやり過ぎたようだな。だが安心しろ、女王サマ。“休憩”ぐらいは与えてやろう」
「そうそう。二人とも壊れちゃったら“玩具”としてつまんなくなるんだもん、兄ちゃんの優しさに感謝しなよ」
二人の言葉を合図に、モスラの身体を戒めていたメカゴジラの拘束が緩み、 彼女はその場にそっと下ろされた。
「ふぁ……あ…っ……」
力が入らず、膝が床につく。隣では、ゴジラも同じように力なく横たわっている。
荒い息を吐き、焦点の合わぬ瞳で仰向けになったまま。
ギドラはモスラの耳元に屈みこんだ。
「ほら、好きなだけ触れるがいい。 ……もう“王”は、貴殿を判別できる状態ではあるまいがな」
その残酷な囁きだけを残し、ギドラとメカゴジラはゆっくりと距離を取った。
モスラは震える指を伸ばす。
淫らな液体に濡れ、呼吸も浅いゴジラへ―― ただ、その名を呼ぶこともできないまま。
指先が、かろうじて彼の肩に触れるとゴジラの瞼が、微かに震えた。
「……っ」
モスラが息を呑むと、彼の視線がゆっくりと彼女の方へ流れる。
だがその瞳にはまだ焦点がなく、誰かを識別する意思も感じられなかった。
それでも── まるで本能だけが、彼女の存在を探しているように見えた。
「王……! 王……!」
モスラは、呼びかけ続ける。
もう届かないと分かっていても、それでも何度も叫び続けた。
(やだっ……やだ……!お願い、目を覚まして!私を見てよ!)
だがその願いも虚しく、ゴジラはただ虚空を見つめるだけだった。その瞳に映っているのは、きっと自分ではない別の誰かなのだろう。そう思うと、心が張り裂けそうだった。
(どうして……?私はこんなにも貴方を求めているのに)
「ぅ……っ」
モスラの唇が震え、声にならない悲鳴が喉の奥で掠れる。
「ゴジラ……!」
モスラはそっと手を伸ばし、ゴジラの頬に触れた。その指先は微かに震えており、彼女の心も限界に近かったのだろう。
だがそれでも彼女は諦めなかった。
「お願い……私の名前を呼んでよ」
モスラの目から涙が零れ落ち、一雫ぽたりとゴジラの胸元に落ちた。
ひどく静かな音。
その瞬間――ゴジラのまぶたが、ほんの僅かに揺れた。
「……え……?」
モスラは目を見開く。
息を呑む。
だがゴジラの身体は動かない。それでも、その微かな震えは確かに“反応”だった。
(今の……感じたの? 私を……まだ……)
モスラの胸に、微かに灯る希望。
しかし――その希望は次の瞬間に脆くも崩れ去った。
「ほぉ……まだ動くのか。さすが怪獣王、しぶといものだ」
ギドラの低い声が、背後から落ちる。
モスラは振り返りもせず、ゴジラの頬に触れたまま震える。
「……王は……私を、まだ……」
「勘違いするなよ? それはただの“条件反射”だ。貴殿の涙が刺激になっただけのこと」
ギドラは近づき、モスラの肩に指を置く。
「本当に呼びかけに応じる意識が残っているなら――とっくに貴殿の名を呼んでいるはずだ」
吐き捨てた言葉は、刃のように鋭かった。
「……王……」
モスラは震える指で、もう一度ゴジラの頬を撫でた。
(届くはず……届いてよ……お願い……)
だがゴジラの反応はそれきりだった。
虚空を見ていた瞳は、また深い闇へ沈んでいく。
モスラの膝から力が抜け、その場に崩れ落ちた。ゴジラに手を伸ばしたまま――まるで祈るように。
「……滑稽だな、女王サマ。それでもまだ、王を愛しているのか?」
モスラは答えない。ただ、震える指先でゴジラの頬に触れ続けていた。
ギドラは小さく笑い、宣告するように告げた。
「安心しろ。貴殿らはもう、二度と離れられぬ」
そう言うと、部屋の明かりがゆっくりと落とされ――薄闇の静寂が訪れた。
来る日も来る日も続く陵辱。
ギドラの嘲り声とメカゴジラの無機質な駆動音、肌に塗り込められる媚薬オイルの匂い、そして淫紋が強制的に送り込んでくる快楽――。
最初はただ辛く、やがてそれは快楽そのものが苦痛になるという最悪の段階へ変わり果てていった。
その日も同じ地獄の続きだと思っていた。
だからこそ、扉が静かに開き、“彼女”の姿が視界に入ったとき――それは、頭が壊れた時に見る幻覚かと思った。
だが違った。
彼女の足取りは覚束ないままで、ギドラの支えがなければ倒れるほど弱っている。
翅は裂かれ、身体は震えていた。
それでも確かに――そこにいたのは、モスラだった。
(……来たのか。こんな地獄に……立てない程に傷ついているのに)
胸の奥で何かがひどく軋み、同時に落ちていく。
喜びと安堵と後悔と、そして罪悪感。そのすべてが、一度に押し寄せてきた。
(どうして……俺なんかのために来るべきじゃなかったのに)
心はそう嘆いているのに、彼女の姿を認めた瞬間、背骨を走った微かな熱だけは“生きていてよかった”と当人に向けて呟いていた。
そして今日もまた、しかもモスラをも交えた壮絶な淫辱を終えたあとに、無造作に寝転がされる。
結局こんなことに巻き込んでしまった。その罪悪感は、快楽で溶かされかけていた脳にも深く刻み込まれていた。
だから孵化した後も、ひっそりと生きていて欲しかったのだ。あの時、メカゴジラに捕らえられた自分を捨ててくれていれば――こんなにも苦しい想いはしなかったはずなのに。
だから彼女の名は呼べなかった。むしろこの場で呼んでしまえば女王としての誇りを穢す、そんな気がしたからだ。
「王……! 王……!」
あぁ、儂の為に泣かないでくれ…モスラ。
ましてや其方の名前を呼ぶ資格なんて……守ると誓ったのに、結局巻き込んてしまった。
止めどない罪悪感で口を開けないままでいると、ふいに柔らかな何かが頬を、全身を掠めた。
懐かしく温かい、羽毛の匂いがした。
暗闇の中でも分かった。それは――モスラの翅だ。
ボロボロに裂け、ギドラに噛み千切られたであろう痕がまだ生々しい。そんな傷ついた翅で、彼女は儂をそっと覆ったのだ。
(……馬鹿な。そんなの……寒いのは其方だろうに)
けれど、身体の奥にほんの僅かに残っていた“熱”が翅の温もりに呼応するように、かすかに揺れた。
その一瞬だけは快楽でも苦痛でもない、ただ“生きている実感”だけがあった。
そして、モスラは震える声で言った。
「……私の名前を、呼んで……」
その一言が、胸のどこか奥底に触れる。思わず喉がひくりと震え、唇がわずかに開きかける。
(……駄目だ。呼べば、また“戻れなくなる”)
ましてや宿敵の前。理性は必死に拒絶した。
だが、寄り添う温もりと、今にも崩れそうな彼女の泣き顔――その前では、その防波堤すらあまりにも心許なかった。
搾り出すように、声が漏れる。
「…………モスラ」
その瞬間、部屋の空気がかすかに震えた。
掠れきった声だったが、モスラは確かに聞き取った。
ぽたり――
胸元に落ちる涙の粒。続いて、堰が切れたように彼女の口から嗚咽が漏れる。
その震えがゴジラの胸の奥まで熱を持って伝わると、そのか細い暖かさが呼び水になったのか、モスラの口元から嗚咽が漏れる。
「ッ…ぐ……ごめ、んね……!」
なぜ謝るんだ。其方が謝る必要なんて微塵もない。それに……謝るならむしろ儂の方だ。
そう言いたいのに、喉は掠れて声すら出せない。
「ゴジラ……私、ずっと……」
モスラは何かを伝えようと必死に言葉を探すも、それ以上は何も言えずに嗚咽を零すだけになった。
そんな彼女の姿を見て、ゴジラは辛うじて動かせる片手を挙げると、指先をそっとモスラの頬に添えた。
「!」
その感触に、モスラはハッと顔を上げる。
ゴジラは、彼女の涙を指で拭おうとしていた。しかしそれは叶わず――指先から腕へ伝い落ちる雫をただ見つめるだけに終わった。
それでも、ゴジラが何かを伝えようとしてくれていることは伝わったのだろう。モスラは僅かに微笑むと、ゴジラの手に自分の掌を重ねた。

