祝祭淫獄リミットゼロ/V

「んっ……あ、あぁ……?」

高みに昇る直前だったのに、突然訪れた喪失感でモスラの双眸はぽかん、と虚ろを写している。

「ふっ……残念そうだな、女王サマ?」
「っ……う、るさい……!」

モスラが睨みつけると、彼は愉快そうに笑いつつ彼女の腹部に刻まれた淫紋に触れた。
途端――

「ひぁあっ!?」

びりっ!とした刺激と共に甘い快感が走り、彼女は大きく仰け反った。その反応を見たギドラは目を細めると、指先で淫紋をなぞりながら告げる。

「そんなに拒まれては気が乗らんな。いくら拒絶しても、この現実が変わる訳ではあるまいに…。貴殿のその強情さが、王をも苦しめているのだぞ」
「っ……!」

ギドラの言葉にモスラの表情が一瞬曇る。
今ここで意地を張れば、王にも自分の感覚が共有されてしまうことになる。

「どうすんだよ、女王サマ。素直に体を開いてくれたら、すぐゴジラに逢わせてやるぞ?」

ニ首の片割れが囁く。

その甘言は、彼女の心を揺さぶった。

(王……)

彼は今、どこで何をしているのだろうか? そんな不安と心配で心がいっぱいだった。しかし同時に、ギドラによって与えられる快楽に流されそうになっている自分がいる。

「ほら、早く言ってみろ」
「……っ……」

モスラは唇を噛みながら視線を逸らした。だがそれは抵抗ではなく葛藤だ。それを見抜いたギドラは再び淫紋に手を這わせる。
直後、モスラはびくんっと身体を跳ねさせた。

「んぁっ……!?」

淫紋をなぞられた箇所からじわりと快楽が滲み出てきて、それが子宮にまで響いてくる。下腹部の疼きも増してゆき、それに伴ってギドラの声や手の動きにも敏感に反応してしまうようになっていた。
モスラの耳元で囁くように、ギドラは声をかける。

「改めて訊くぞ。我に、どうされたいんだ?女王サマ」
「……っ」

(だめよ……!)

頭ではそう理解しているものの、身体は徐々に快楽を欲しており、モスラは無意識のうちに腰をくねらせてしまう。

「どうした、女王サマ。そんなにも物欲しそうな顔をして……。何か言いたい事でもあるのか?」

ギドラの挑発にモスラは思わず唇を強く噛むが、それでも身体の熱は増すばかりである。
そんな彼女の心情を見透かすようにギドラは淫紋を指先で軽くなぞる。

「んぁっ…!やだぁ……」
「ほぉら、今の感覚が王にも伝わっているのだぞ?」

ギドラは淫紋に爪を立て、軽く引っ掻くように動かす。するとモスラの身体に電流が走り、彼女は大きく仰け反った。

「ひぅっ!? や、あぁっ!」

モスラが悲鳴を上げると同時に、彼女の下腹部に刻まれた淫紋が輝き始める。それはまるで王の鼓動と共鳴しているかのようで、モスラは自分の身体の変化に恐怖を覚えた。

(王っ……! 感じては、だめ…!)

心の中で王―――ゴジラの名を呼びながら必死に快楽を逃そうとするも上手くいかない。それどころか逆に意識すればするほど淫紋は熱を帯びてゆき、モスラの精神を蝕んでいく。

「ああっ、やぁっ! だめぇ……っ!」

モスラは腰をくねらせながら身体を大きく弓なりに反らす。すると淫紋の輝きは強まり、彼女の秘裂からは失禁よろしく愛液が滴り落ちた。それは彼女がひどく感じている証であり、同時に王の意識も共有してしまった証拠でもある。

「ほう? あちらも盛り上がっているらしいな」

ニヤリと笑うと、ギドラはモスラの秘裂を指先でゆっくりとなぞる。その刺激だけで彼女の腰はビクンッと跳ね上がり、それと同時に淫紋が輝きを増した。

「んぁっ! あ……あ……!」

モスラは蕩けた表情で吐息を漏らすと、潤んだ瞳でギドラを見上げる。その瞳には先程までの気丈さはなく、代わりにあるのは快楽に屈しかけている雌のそれであった。
そんな彼女の姿にギドラは嗜虐的な笑みを浮かべると、恥丘の割れ目へと指を滑り込ませた。

「あ……っ」
「さぁ、もう一度問うぞ……女王サマよ」

ギドラはモスラに顔を近付けると、その耳元で囁くように尋ねる。

「我にどうされたい?」
と。

(言ってはダメ……!)

モスラがか細く首を振った瞬間、ギドラの指がぴたりと止まった。
室内の空気が―――凍る。

「……なるほど」

ギドラの声音が、先ほどまでの戯れから一転して冷え冷えとしたものに変わる。ニ首ですら口を閉ざすほどの“支配者の声”。

「拒むつもりか。―――ならば、その責は王に負わせるとしよう」
「っ……!」

その言葉だけで、モスラの鼓動が跳ね上がった。
胸の奥を冷たい爪で掻きむしられたように、呼吸が乱れる。

(やめて……王を、巻き込まないで……!)

だが声にできない。
声にしたら―――自分が何を求めているか、認めてしまうから。
そんな葛藤を見透かしたように、ギドラはゆっくりと身を屈め、淫紋の刻まれた下腹部へと顔を寄せる。

「ならば、貴殿の身体に訊こう。 言葉より正直な方にな」
「や…っ、ま、待って……!」

かすれた声を上げるより早く、ギドラの唇が淫紋の中心へ、ちゅく、と触れた。

「―――っぁあああっ!!?」

声にならない悲鳴が喉奥から漏れる。まるで熱い針が子宮の奥まで突き刺さったような衝撃。
それと同時に淫紋が強く脈動し、光が爆ぜる。
ギドラは微笑を浮かべたまま、わざと吸い付くように口づけを深める。

「あ……っ…!やぁ……っ……!あっ……!」

モスラの腰が勝手に浮く。
彼の舌が触れるたびに、淫紋は王の鼓動と同じリズムで震え、そこから直接快楽が流れ込んでくる。

「王にも…はっきりと感じているのだぞ。 貴殿が今、どれほど乱れているか……すべて」
「や……やめ…っ! 聞かせないで……!!」

必死にかぶりを振る彼女を、ギドラは嘲るように見下ろす。

「では改めて問う。貴殿は、どうされたい?」

答えられない。しかし淫紋は、彼女の沈黙を裏切るように淡く脈打つ。
ギドラはそれを見ると、薄笑いを深めた。

「……沈黙か。―――ならば“肯定”と受け取ろう」

その瞬間、モスラの心のどこかが音を立てて崩れた。
ギドラの唇が離れた時、モスラは小刻みに震えながら息を吸い込むことすらできずにいた。

「……ふ……っ、ぁ……」

脚先まで痺れるような余韻が、子宮の奥でまだ跳ね続けている。しかしギドラはその隙を与えない。

「さて―――そろそろ観念しろ、女王サマ」

ゆっくりと、だが容赦なく、ギドラの指先が再び秘裂をなぞる。
その瞬間。

「あ―――っ!?だっ……だめ…っ、まだ……っ!」

先刻の口づけで限界ぎりぎりまで高められていた身体は、ほんの一撫でで簡単に頂点へと押し上げられてしまった。
腰ががくん!と跳ね、鎖がきつく鳴る。

「くぅッ……ああああっ!!」

2度目の絶頂が、先ほどよりもずっと鋭い波となって襲う。
視界が白く弾けた瞬間―――淫紋が、まるで呼応するかのように強く点灯した。

「……おや?」

ギドラが楽しそうに目を細める。
直後、淫紋から脈動のような光が放たれ、そのリズムが異様に速くなっていく。

(や……っ……なんで…!? うそ……とま……らな…っ!)

モスラの意識に、恐怖と快楽が入り混じった悲鳴が響く。だが身体はもう言うことを聞かなかった。指先が奥深く、肝心な箇所を軽く押しただけで―――

「ひぃっ!? やだっ、待っ……あっ、あぁああああッ!!」

3度目の絶頂が強制的に引き出される。
モスラはびくんと全身を跳ねさせ、脚が震え、鎖ががしゃん、と派手な音を立てた。
それでも、まだ終わらない。
淫紋が、まるで“堰が決壊したように”明滅し続けている。

「く……っ、や…っ、来ちゃう…っまたっ……!」
「ふむ。完全に開いたな」

頻りにひくつく肉孔の奥で、ギドラの指先が前後になぞられる。そのたった数センチの動きで――

「だめぇッ!! あっ……あぁああぁあああッ!!」

4度目。間髪入れずにすぐに5度目。
そのわずかな間に、モスラの体は小刻みに跳ね上がり、声にならない喘鳴を漏らし続ける。
今まで耐えていた理性は、花盛りの終わりを告げる散華の如く、はらはらと剥がれ落ちてゆく。

「ひっ……ぅ……あっ…! やだ……嫌なのに……いやぁっ…!!」

涙がこぼれ、視界が滲む。
淫紋が光るたび、王の気配が―――どこか遠くで微かに震え、それがまたモスラを追い込んでいく。

「ふふ……よく踊ってくれるな。見事だ、女王」

細くも確かな異物感―――それも、ぐぽぐぽと空気と愛液が入り交じる淫猥な音を意識した途端、モスラはまた絶頂へと攫われてゆく。

「あ、あっ! だめっ……また…嫌……っ!ああぁっ!!」

淫紋が明滅し、また達してしまう。
しかしそれでも、ソコの輝きはおろか胎内を這い回る指の動きも治まる気配はない。むしろ重点的に強く突き続けている。

「あ……っ、いやあぁ…っ! も…っやめ……てぇ……!」

6度目。7度目。
自ずと細腰がガクガクと跳ね、雌蕊から淫水を吹くも体内の熱が振り払われる様子もなく、もう何度達したのか彼女自身すら分からない。

「あ、ああっ……もう……っ……! おかしく……なっちゃうぅ……!!」
「ならば、思う存分狂ってしまえよ。 王も、“貴殿の今の声”を―――ちゃんと聞いている」

その言葉が耳に入った瞬間、淫紋がひときわ明るく弾け、モスラは最後の抵抗すら解けた身体で、大きく仰け反りながら―――

「っっっあああぁああぁぁああああっ!!」

深く長く、慟哭と共に、堰を切ったような絶頂に呑み込まれていった。

「……ふっ、想像以上に乱れてくれるな。愛しの王と共に達するのは、さぞ格別であろう?」
「これまででたくさんイッたの、初めてなんじゃないの?女王サマ」

左右から囁き声が降り注ぐ。
抗えない事実だった。
王と交わった夜でさえ、これほど乱れたことはない。ましてこんなふうに、休む間も与えられず――連続で、無理矢理。

なのに。

(……どうして……っ)

今のギドラの指は、愛も慈しみもないただの“雌いじめ”のはずなのに、その技はあまりにも的確で、逃げ場を一切与えてくれない。

「あ…っ、ん……ッ! ああぁっ! イ、イクゥッ……!!」
(王……っ、ごめんなさい……! でも私……もう…っ)

モスラは心の中で王に謝罪しながら、同時に―――“こんな時でさえ彼を想ってしまうほど、愛している”という事実を痛感してしまう。

「ククッ……!」

これでもうコイツは抵抗できないな。
ギドラの喉から愉悦が溢れた瞬間、指がようやく秘部から糸を引いて離れた。
そのわずかな“抜ける感触”だけでまた達してしまいそうになるが、どうにか堪えたモスラは腕から力が抜け、ぱたりと両手を寝台に預けた。

「あ……っ、は……ぁ……っ……」

相手を睨む余裕もない。胸を早く上下させながら、身体の内側で渦巻く絶頂の余韻に震えていた。

「見ろ、女王サマ。 貴殿の蜜でこの通りだ」
「……っ!」

陵辱の痕をべっとり残した指先を見せつけられ、モスラは羞恥に顔を熱く染めた。
しかし目を逸らすことも出来ない。淫紋によって感覚が共有された以上、王もこの快楽を“共に”感じているかもしれない。

(……いや……考えたく……ない…!)

頭を振っても、その思考だけは消えてくれなかった。

「あれだけイカされて、疲れちゃったよねぇ? 女王サマ」
「こりゃ、しばらく腰砕けで歩けねぇな」
「ここまで敏感だと、交合わる時はさぞ―――おっと? まだ早いか」

軽口。嘲り。楽しげな嗤い。
モスラは荒い呼吸を繰り返しながら潤んだ瞳でギドラを睨みつけたが、彼はまるで意に介していない。
それどころか、指先についた蜜を二首に舐めさせ、くぐもった喉鳴りを愉しげに響かせている。
その光景だけで背筋が震え、モスラは息をのみ――呼吸を整えようとしても整わず、胸元は悔しいほど甘く細かく上下し続けていた。
ギドラの片手が頬に触れると、条件反射のように肩が震える。

「そう睨むな。可愛い顔が台無しだぞ」

その声音は妙に柔らかく、先程までの嗜虐とは別物の“温度”を帯びていた。
モスラは震える睫毛を伏せ、顔をそむけようとするが、ギドラの指が顎を軽く押し戻す。

「フン……見たくないフリをしても無駄だ。この運命を拒絶したいのか、受け入れたいのか――自分でももう分からぬのだろう?」

ギドラは、モスラが必死に睨み返してくるその表情を眺めながら、わざと優しげな声音で囁いた。

「――そろそろ限界ではないか、女王よ」

その瞬間だった。
刻印が、脈打った。
ひとつ―――どくん、と。次の鼓動を刻む前に、モスラの視界が白く塗りつぶされる。