デスギドラの贈り物

あの日から僕とあの人の関係は変わった。

そう、あの人───ガイガンに抱かれてから僕を少しずつ恋人として見てくれてる。

ただ、ギドラとの関係はともかく、一応僕は満たされた。

けれど、その反面……あの人は満たされているだろうか?

 

「ふぅ……」

時は人工の満月が輝く夜。今宵もガイガンはメガロを抱いた後、何やら疲れきった様な溜め息を吐いた。

「…どうしたの?」

まだ朱の残る顔を傾げながらガイガンに問い掛けるメガロ。その時彼はクスッと笑った。

「いや…この期に及んでギドラの事が気になってな。」

何時もこれだ。結局ガイガンの心は、命の恩人でありながら恋人であるギドラに行き着く。

「やっぱり…忘れられないんだ。」
「あぁ……まだ心に引っ掛かってる。」

ぼそりと漏らし、ガイガンはそのままシャワー室に入っていった。

───此処は身を引くべきかな…でも、今更引き下がっても手遅れだし……

幾ら考えても、答えは出ない。

ドア越しから水音が聞こえてくる。

 

 

「オイ、何時ものメガロらしくねぇぞ?」

所変わって翌朝のイースター島。断崖絶壁に立って潮風を浴びていると、どこからかやってきたのかいきなりデスギドラに声を掛けられた。

「で、デスギドラ……」
「随分暗い顔してたぞ。こういう時はな、体操とかジョギングに限るぜ?」

死神の名前を携わっているとはいえ、相変わらず元気だ。彼は屈強な上に一種の不死能力があるので、疲れを知らず、あまり悩み事がないのも解る気がする。

 

「うん…実はガイガンの事でね……」
「ほほぅ?」

デスギドラはメガロの話を聞いている内に“ふむふむ”と相槌を打つ。そして一通り話し終えた後、デスギドラは“成る程”と呟いた。

「アンタがギドラさんに悪いと思うのも解るわな。だけど、それで良いのか?その内飽きられちまうぞ?」
「え…?飽きられるって……」

そんな事言われても。そう言い返す前に、デスギドラは口を開いた。

「マンネリ打破には開き直りが一番なんだ。自分から誘ってみるのも良い事だぜ?」

開き直り…誘ってみる……前者はともかく、後者は些か抵抗がある。

「でも誘うって…そんな事やった事ないけど……」
「最初は戸惑うよな。けど、結局お前はガイガンを繋ぎ止めたいんだろ?それはオレが用立ててやるよ。」
「繋ぎ止める…?」
「待ってな。追々サプライズ品をこっちに寄越すわ。」

そう言うと、デスギドラは如何にも“心配すんな”と言い出さんばかりの笑みを浮かばせ、飛び去ろうとした。

「待って!」

「あ?」

呼び止められ、一旦足が止まる。

「何で…貴方はそんな所まで付き合うの?何のメリットもないじゃん。」

静寂の中でひゅう、と風が一吹きする。
そして、またもやデスギドラは笑みを浮かべて答えた。

「それは…オレがアイツの友達だからさ。」

「デスギドラ……」

直後、デスギドラはギドラ族特有の羽を大きく動かすと、虚空へ飛んでいった。

 

 

あれから数日後、シートピアにてメガロ宛に荷物が届いた。

 

「メガロ様、お届け物です。」
「え?僕に?」

宛名すらなかったらしい。もしや民からの贈り物だろうか、それとも…こないだデスギドラの言っていたサプライズ品とやらだろうか。

流行る気持ちを抑え、荷を開ける。そして、最初に目に飛び込んできたのは、意外な物だった。

「え…エプロン?」

それも他者を挑発せんばかりの赤い色で、表面には金色の刺繍があった。

「コレって、中華風だね。あれ……?」

ふと、エプロンのポケットに何かが入っているのに気づいた。手紙にしては大きい。
そっと取り出してみると、目を疑ったと同時に顔が赤くなった。

「な、何これ!?」

それは男根の形をした所謂“大人の玩具”だった。
同時に、先日デスギドラが用立てると言うのはこういう事だと悟った。

 

「ったく…何が友達だよ!大体こんなヤらしい物をこっちに送りつけるなんて……」

ブツブツと悪態を吐きながらも、交互にエプロンと玩具を見つめる。

「けど、今更返す訳にもいかないしなぁ……」

はぁ……と溜め息を吐くメガロ。何せデスギドラが自らとガイガンを思って差し出してくれたからだ。

 

とにかくここまで来れば、最早彼───ガイガンを誘わない訳にはいかない。

 

 

一方、宇宙――月の裏側ではデスギドラがガイガンを呼び出していた。

「こんな所に連れてきてどうしたんだ?話なら母星で幾らでも聞けるだろうに。」
「あぁ、悪ぃな。メガロがどうしてもアンタに会いたいって言うんだ。」
「オレを…?一体どうして」

その問いかけにデスギドラは不敵な笑みを浮かべると、肩を竦めて更に続けた。

「何でも、アンタと試したい事があるんだってよ。」
「試したい事って…何だ?」
「さぁな。それより早く行ってきてやれよ。ギドラさんに感付かれたらお互いヤベェだろ?」

この時ガイガンは“こんなにひた隠しにするって事はコイツ、オレの見てない間に彼奴へ何か吹き込んだな”と思った。
けれど、決して表情には出さずにその場を後にした。

 

 

 

そして────地球・虚空に青い影が横切った。
勿論、モゲラにはバレずに宇宙怪獣にはお馴染みの侵入方法だ。

───巨大生物対策部隊にバレたら煩いからな、早く目的地に行かねば。

巡視船や飛行機に気を付けつつ、ガイガンは見渡すばかりの青黒い海と幾多の島を傍目に、やがてイースター島に着いた。

島の空気は相変わらず閑静かつ神秘的で、何だか気持ちを厳かにさせる。それは周囲にあるモアイ像(シートピア人にとっては連絡装置)の所為だろうか。

そしてガイガンは額に赤い珠のあるモアイ像の前に立ち、こう告げた。

「メガロ、今来たぞ。此処を開け『……お待ちしてました』

突然聞こえてきたか細い声。しかもかなり震えている。

「メガロ…?一体何を改まって……」

ゴゴッ、とモアイ像が軋んだ音を立てて開き、そこから硬質硝子でできたエレベーターが姿を現す。

直後、シュンと音を立てて扉が開かれた。

───訊かずに来い、って事か。

今までとは雰囲気が違うと思いながらも、ガイガンはそれに乗り、地下に降りる。
当然エレベーターの扉は忽ち元のモアイ像に戻るも、その中は照明があり、真っ暗になる事はない。

因みにこれが行く先、メガロの私室(シートピア守護神だけにかなり広い)に繋がっているので、地下に着いた先で迷う心配はない。

暫くして、エレベーターは漸く“目的地”に着いた。

「入るぞ。」

此処だけは普通にドアだ。それでもお構いなしに数度かノックした後キィ、と音を立てて扉を開く。

が、何故か室内はスタンドランプしか着いておらず、周囲は真っ暗だった。

「なっ…何だ、電気も点けず「お待ちしておりました」

突然寝台の方から声がした。そこには───ランプのほの暗い明かりに照らされたメガロが立っていた。

しかも何か服を着ている様だ。

───これは……

暗視センサーで彼女を見る。案の定彼女は全裸ではなく、何やら服を着ている様だった。

そんな有り様にガイガンは訝しげな顔をしつつ、メガロに近付く。

「何も隠さなくって良いだろ。普通に服を着てるならこちらから……」

不意に闇に目が慣れてきた頃、ガイガンは目を疑った。
そこにいるメガロは所謂裸エプロンという状態で、それもその布地に擬態せんばかりに赤面していたからだ。

「め、メガロ…これは一体…」
「こ、今夜ばかりは特別に……積極的になったんだよ?」

積極的。それにしては些か準備が良すぎる。

そしてガイガンはメガロの有り様に戸惑っていたものの、漸く気付いた。

───彼奴の差し金か…だとしたら、メガロがこんなヤらしい服着る訳ないもんな。

 

同時にガイガンは、“乗ってやるか”と心中で呟いた。

「ふむ…よく似合ってる。」
「え……?」

ガイガンはつ、と一歩を踏み出して手を翳すと、布地越しにメガロの乳房を弄くった。

「あっ…!」
「しかも相手を誘惑せんばかりの赤か……白い裸体によく映えるな。」

言葉が終わらない内に、ガイガンの指先はエプロンの横から直接突起を摘む。

絹の様にすべすべした肌───おまけに先程入浴してきたのだろう、微かに彼女の体から薔薇の芳香がする。

「ぁう……そんないきなり…っ!」

指で押し潰すかの様にクリクリと弄られる時もあれば、逆に人差し指と親指で扱く様に起たせる時もある。勿論、それだけでメガロの体は奇妙な感覚で粟立つ。

 

変な感じ…自身が勃ってく……。

あ……が、ガイガン…!」
「ん?今度は何だ?」

メガロから話し掛ける事で、不意にガイガンの執拗な奇襲は止む。

「き、君も脱がないの?僕だけ感じてちゃ、不公平だよ。」

本当は自分から切り出す事はなかったが、今回ばかりは別だ。

「……あぁ、すまないな。」

ひとつ詫びを入れるとガイガンは数歩下がり、青いノースリーブと袖を脱ぎ始め、躊躇いもなくスパッツを脱ぐ。

それらをぱさ、と無造作に床に投げ捨て、おまけに金色の髪留めも外した。

直後、普段まとめられている瑠璃色の髪がふわりと広がり、ガイガンの躯の大半を隠す。

「あ……」

胸の膨らみがないとはいえ、まるで女性の様な体だ。更に充分な照明で照らされていないお陰で、その妖艶なビジョンは殊更に美しかった。

「…メガロ?」
「うん、少し…良いかな?」

と、メガロは震える足取りでゆっくりとガイガンに近付く。

そ……と彼の胸板に触れ、同時に左胸に耳を当てる。

とくん…とくん、と鼓動と血の流れる音が確かに聴覚に伝わってくる。彼は四肢を奪われて一度死にかけた身だが、それでもこの肉体に機械を埋め込まれ、生を受けている。

「ガイガンの体…綺麗だね。女みたいだよ……」
「そうか?けどこれは只のタンパク質の塊みたいなもので…」

ガイガンの言葉が途切れた。というのも、メガロが爪先立ちをしたからだ。

これは間違いなく接吻の合図だろう。

 

───先制攻撃…か。考えたな。

不意をつかれたと思いつつ、ガイガンもそれに答える様に彼女に唇を重ねた。

桜桃に似たそれを吸う様に弄び、やがて舌を絡ませる。

「ん……んんぅ…!」

一旦口を離したと見せかけて、またもや執拗に咥内を荒らす。

「んくぅ……っふ…!」

ガクガクとメガロの足が震える。目だけで下を見れば、エプロンに唾液が付着していた。

───いやぁ……そんなのされたら…立ってられないよ…!

「は……んふ…ハァ………」

きゅ、と目を綴じようとした時、不意に粘膜の糸を引きつつガイガンの舌はメガロの咥内から離れた。

「ぷはぁ……!」

今までにない程に赤面しながら息を整えるメガロに対し、ガイガンは口を軽く拭って彼女を促す。

「腰砕けになるのは早いぞ。さ……」

ぽすん、と寝台に座り、脚をそっと広げる。勿論羞恥心は少しあったが、構わない。
此処には自分とガイガンしかおらず、こちらから連絡でもしない限り他人が現れる事はない。

「……ん」

メガロもガイガンの脚の間に顔を埋め、その中心にある自身を手で導く。

自らと同じモノが付いている器官……何度も自分を貫いていたモノは見慣れているはずなのにふと愛おしくなり、挨拶といわんばかりに切っ先へ口付けをした後、根元を手で弄る。

「う…!」

ガイガンがびくりと反応する。それでも構わず、メガロはすっかり潤った咥内にソレを含んだ。

───これも…息づいてるんだ……

唇に伝わる確かな鼓動と熱。コレが胎内に入ると思っただけでぞくりと背筋に興奮が走る。

「んむっ…ふぅ……ンんぅ…!」
「そうだ、良いぞ。もっと舌を絡めて……」

じゅぷじゅぷと水音を立てつつ、メガロは自身を奉仕する。それはまるで樹液を貪る甲虫さながら。おまけに花弁からは、じわりと蜜が溢れてくる。

やがて彼女の手が蜜袋を数度か優しく揉んだ後、咥内でガイガン自身が一回り大きくなった。

更に唾液と先走りの液がメガロの口元を濡らす。

「ふん、っんむぅ……ん゛んん…!」
「メガロ…っそろそろ出すぞ…!」

とろり、と一際苦い蜜が溢れた後、白濁がメガロの咥内に注ぎ込まれた。