青いともだちにはご用心 1/6

時は夏の真っ盛り、擬怪獣たちの住む世界では毎日のように猛暑が続いていた。
それは日本も同じで人間達はもちろん、暑さの耐性がない怪獣達はその殆どが夏バテを起こしていた。
こうなればバトルナイザーにこもれば楽なのでは…と思う者もいるだろう。しかし、大戦の終わった現在ではそれらは全て負の過去を思い出すという理由で殆どが廃止されており、あの居心地の良い空間に戻る事は許されていないのだ。
故に、元レイオニクスに使役されている怪獣達も例外ではなく、嶺門家の家主ことレイが不在の間に留守番を頼まれたゴモラとミクラスもまた、和室もとい客間で少しでも涼を取ろうと、二人揃って畳の上でゴロゴロしていた。

「暑い~…」
「暑いね~、ゴモラ兄ちゃん」

窓を開けても入ってくるのは風ではなく、けたたましい蝉の声と忌々しい熱気のダブルパンチで、それらが一層二人の体をジットリと汗ばめさせる。
おまけに冷房はあれど、使えばエレキングに「家計を赤字にさせる気か」と叱られてしまう。因みに彼はというと、レイと共にZAPへ(特にエレキングはクマノに誘われたらしい)、リトラはピグモンの所へ遊びに行っている。正直これだと留守番すっぽかして市民プールへ行きたい気分だ。けれどバックレたら確実にレイ達から大目玉が来る。それだけは避けたい。

「ゴモラ兄ちゃ~ん、アイスとかジュースないの?」
「朝ので終わっちまったみたいだ…だけど、今から買いに行くのだりぃわ」

毎日こんなんだと、いっそガンダーやペギラとか来てくんないかな~と思いながら寝返りを打つと、横向きの視界の隅に白い箱がぽつんと置いてあるのが見えた。

「あれ…?」

最初は暑さで幻覚が見え始めたのかと思ったが、数回か瞬きして目を凝らしてみると、やはり箱は現実に、そこにある。
先ほど尽きていた筈の体力も好奇心の前では難なく復活し、ゴモラは箱に向かって四つん這いで近づいてみた。

「なぁミクラス、ちょっと来てみろよ」
「なに~?虫でも入った?」

「違ぇよ。荷物だ」

誰かからの贈り物かな?と心中で問い掛けつつ、じっと箱を凝視する。けれど、厚紙製であろうそれの上部には差出人のラベルすらなく、光沢のある無地で怪しさを感じる。

「名前も書いてないし、宅配の人が間違えて剥がしちゃったのかな」
「それにしちゃ、ラベル跡がないな。だったら近所からの差し入れか?」

もしかしたらジュースかゼリーが入ってるかも♪とボヤきながら、早速箱に手を掛けようとするゴモラに、いつの間にか彼の後ろにいたミクラスの制止が入る。

「止めなよ兄ちゃん!本当に誰かの荷物かも解らないんだよ!?」
「良いだろ別に!中身くらい見ても大丈夫───」

だろ、と言いかけた瞬間、突然箱から甲高い鳴き声のような音がした。

「うわ、なんだ!?」
「今キューって声がしたよ!?」

明らかにコレは土産物の類ではない。思わず後ずさる二人を尻目に、箱は尚も奇妙な音を放ちながらひとりでに鳴り続ける。
そして中から眩い閃光が迸った瞬間、箱のあった場所にはハンドボールの如く小さな結晶状のカプセルが残され、その中にはスカイブルーと白のツートンカラーという奇妙な色合いの小動物らしき生き物がガラス越しにこちらを凝視しながら蹲っていた。

「な、何だコイツ?ハムスターか?でも、こんな色した小動物なんて見た事ねぇし……」
「兄ちゃん、きっと密輸されてここに逃げてきたんだよ」
「逃げてきたって…部屋はほぼ密室なんだけど」
「あんまり暑いから網戸もしないで窓開けてたじゃん、ほら」

ミクラスが指さした先、そこには確かに二人揃って畳に寝転がる前、自分が開けた窓が全開になっている。その望みに反して風は未だに入ってこないままだ。
ゴモラが迂闊だったなー…と思った矢先、ふと頭の中からあの小動物のものと思わしき可愛らしい声がした。

『わたしの名前はギャビッシュです。どうか助けて欲しい』
「「!?」」
『この子が言うように、わたしは物珍しいからと言って密漁され、売られそうになった所を必死に逃亡してきました。どうかお願いです、わたしをここに匿ってください』

ギャビッシュと名乗ったその生き物は言い終える前に両目から大粒の涙を流し、ゴモラ達に懇願する。その姿を見て居た堪れなくなった彼らは顔を見合わせると互いに頷く。

「ひどい事をする人達もいるんだね。ゴモラ兄ちゃんは?」
「わかってる。こんな暑い中大変だったろうに……ギャビッシュ、だっけ?好きなだけここにいて良いからな」

飼育許可許可は現時点では得られないものの、これだけ可愛らしいと一家の癒しになるだろうなと思う中、ギャビッシュはパァと目を輝かせ、またもやテレパシー越しに切り出した。

『あ…ありがとうございます!それではお言葉に甘えて……何か冷たいものを下さい』