面接試験 3/5

その質問にも、ジェットジャガーは「問題ない」と言わんばかりに電子音をひとつ上げると、自信満々に他者へ親指を立てた。いわゆるサムズアップという仕草だ。

「自信満々じゃないか…その気概だとこれからの訓練は長く食いついていけそうだな。
その気概に免じて、君を採用する」
「!」

メカゴジラの言葉に、ジェットジャガーは驚いたかのように身を竦ませた。勿論機龍もこの場で―――小声でメカゴジラに投げかける。

「それでいいんですか?経歴を聞いただけで即日採用なんて……」
「あのなぁ機龍、断れる訳ないだろ?かつて凶悪な宇宙怪獣達を前にしても挫けなかった勇敢なロボットが、わざわざウチの門を叩きに来たんだ。いい戦力になれるぜ?」
「ですけど…」
「通訳もとい教育係は任せたぞ。実践訓練は俺が引き受けとくから」

先程のジェスチャーがゴジラ族に通じたからって、育成すらまた自分に押し付けるのか…呆れから来るため息を堪えつつ、機龍はもう一度ジェットジャガーに目を向ける。

「唐突で申し訳ないですけどジェットジャガーさん、いつからここに来れますか?これからの訓練スケジュールを確定させておきたいので―――」

機龍の言葉が忽ち詰まった。というより、視線に入ったものは異様な光景だった。
ジェットジャガーの背丈が、秒ごとに自分達の背丈を超えているように見えたからだ。思わず機龍は満足げにオイルを飲んでいるメカゴジラの腕を掴むと慌てたように切り出す。

「どうしたよ、機龍?何かアイツにバグでも…」
「先輩、早く逃げましょう!」
「何で?地震でも起きて…!?」

目の前の異様な光景にメカゴジラも息を呑んだ。自分達の背丈くらいだった身長は今にも天井に届きそうになっており、忽ちそこを突き破らんばかりに巨大化していた。
どうやら即採用された嬉しさで、彼の中にある良心回路が更なる暴走を起こしたらしい。

「マジかよ…ジェットジャガー!もういい止めろ!…機龍、奴が巨大化するなら何でもっと先に言わねぇんだよ!?」
「先輩が詳しい事を聞かずに進めるからじゃないですか!とにかく早くここを離れますよ!」

面接に武器はいらないと思って置いてきてしまった事を悔やみながら、メカゴジラ達は全速力で駆け出した。背中から響き渡る破壊音を耳にする度、この状況を起こしてしまった事をなんて報告すれば良いか、必死に言い訳を探しながら。

時間が経つに連れて、絶え間ない破壊音と遠くから響く隊員達の悲鳴と合わさって瓦礫と粉塵が辺りを包み、面接室及びその周囲の部屋も崩れ去っていった。

「はぁ、はぁ、先輩、この始末どう付けてくれるんですか!?」
「俺に聞くな!とにかく出口を―――!」

言いかけた直後、突き当りに緑色の如何にも重そうなドアを見つけた。上には見慣れた誘導が灯っている。
間違いない、非常口だ。そう思った直後、ふっと周囲が暗くなった。

「「うわあぁぁああぁ!!」」

どこからか落ちてきたのか一際大きなコンクリート片に真上から圧し潰され、メカゴジラは成す術もなくその場で機能を停止した―――。

 

 

数分後、通報を聞きつけた救急隊が巨大生物対策部隊本部に出向き、ビル倒壊の被害に巻き込まれた隊員達を救い出していた。
当然その中にはメカゴジラも混ざっており、大きな外傷はなかったものの気絶から目覚めた頃には真っ先に対策部隊の上官・黒木特佐に尋問を受けている。その表情はいつもの冷徹さの中に僅かながらの憤怒が満ちており、メカゴジラ達が言い訳をしようものなら即座に叱責されそうな勢いだ。

「お前達がいながら、この状況は一体何だ?スパイが潜り込んでいたのか?」
「そ、それはそのー…これには色々ありまして……」
「…先輩、あれ」

機龍が目線をやった先、そこにはジェットジャガーが自分達を探しているのか、散らばるコンクリート片に足を取られながらも歩を進めつつ周囲を見回していた。

「アイツ……」

メカゴジラが声を漏らした直後、彼もまたこちらに気づくと駆け足で接近し、高速ともいえる速さで頭を下げてきた。

「なるほど。この事態を引き起こしたのはあのロボットだな…即時に持ち主の元へ送り返すか、処分しろ。またこのような事があってはならん」

 

 

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